009-JK ページ9
＊
俺の『何者』という問いに
「ただの転校生です。
あなた方に危害を加えることはありません。」
と全く答えにならないことを言い放って以降
幾らその事について聞いてもシカトされた。
『絶対怪しいんだよ、アイツ。
ヒョン達はともかく俺は絶対信じない。』
俺が疑っているのは大人の手先である可能性。
それなら転校初日から屋上に来たのも納得だ。
他の大人でさえ俺ら全員がいる屋上には
立ち寄れない。個別ならアレだが。
しかし能力が効かないアイツなら
俺らのところに来ることが可能だからだ。
粗方信用を得たところで
全員あの怪しい薬を飲ませるつもりだろう。
『はぁ……』
あのままあそこにいてもしょうがなかったので
とりあえず宛もなく透明化したまま
廊下を進んでいると
フッと視界の端に映る見慣れたミント色。
戻ってみると、そこは図書室。
中を覗くと予想通り、
居眠りをするユンギヒョン。
ちょうどいいから構ってもらおう。
そう思い図書室の扉をすり抜けて透明化を解く。
起きなかったらそれでいい、俺も一眠りしよう。
「……ん、ぐが………?」
俺が静かに椅子を引いて向かいに腰掛けた途端
短く呻いて目を覚ますヒョン。
「あ、すみません。
起こすつもりでは……」
「んや、別に…俺も割といたし。
そろそろ戻っても大丈夫か?」
トロンとした目。結構寝てたな。
「どこに?」
「屋上。
ジニヒョンとクオズがうるさくて。
避難してきたんだよ。」
なるほど……容易に想像がつく。
と、小さな違和感。
「あれ、ヒョン。今日メガネは?」
彼の能力、情報閲覧の反動は
視力悪化だったはず。
本人曰くそれは少しでも視ると、
程度はまちまちだが悪化はするらしい。
しかし彼は上のポケットにかかるそれを
かける気配もなく、普通に俺の方を見て
会話を続けている。
「俺も不思議なんだけどな。
別にぼやけたりもせず見えるんだよ。
昨日早く寝たからか?」
首を捻るヒョン。心当たりはないようだ。
「そういやジョングガ。お前はもういいのか?」
「何がですか。」
粗方想像はつく。
俺の少しぶすくれた顔を見て、
楽しそうに口端を上げるヒョン。
「謎の転校生チェAの、監視だよ。
その調子だと喧嘩でもしたみてぇだな。」
「別に。」
先程の、会話を思い出しますます怒りが募る。
「ハッ、イラついてんなぁマンネ。
……でもその警戒は多分正解。
大人側につこうがつかまいが、
あの能力は利用されるだろうから。
お前も屋上戻るか?」
「はい。」
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