【歌い手】ライブやイベントに一切出演しない爆発的人気を誇る歌い手が逆ハー(乙女ゲー)を回避しそこねそうになる話

七十話 理由ﾜｹ ページ29

96猫 side

今天月のライブに来てるんだけど……

途中、隣の子がキョロキョロとあたりを見渡したと思ったら、思い詰めた顔をした後に泣き出してしまった

吃驚しすぎて、ライブをやっていることなんかお構い無しに、声をかけた

9「天月が良すぎて泣いたのか、そうだよな！良いよな！」

自分なりの慰め

『……』

9「ご、ごめん、でも感動したんだよね！？」

質問してどうすんだぁああ！！

『………違うんです、感動とかじゃなくて、………私、こんなふうにファンの方とと接したことないなって……天月さんに圧倒的に抜かされた気がして、悔しいんです……』

この子、もしや歌い手？

そんな疑問はともかく、まずは彼女を泣き止ませることに専念した

9「……そうか…偉いなぁ……悔しいって思えて」

『……なん、で』

9「もう二十歳超えちゃうと、頭下げたり叱られたりって当たり前になっちゃう世界なんだよ。それでも頑張ろうとして悔しいって思えるのは偉いよ」

よくわからないことを語る猫

これでかなりの精一杯

『二十歳じゃ、ありません、けど…』

9「だーかーらー！そーゆーのはいいの！例え話だから！！………素直に、偉いと思ったよ」

いやぁ、簡潔に言えた、と思う

『………っ、ひっく、あり、がとう、ございま、っﾋｯｸ、す、ぅ、う、うわぁぁあん』

え、

9「え！？えぇ！？もっと泣いちゃったよ！！えっと、ほらほら、泣き止んで！」


フードも被ってるし、会場も暗いから顔はよく見えない

けど、確かにこの子は歌い手だと思った


天月に招待されたのってうちとはしやんとんーっと誰だっけなぁ？

もしこの子が歌い手だったら、名前をきこーっと






天「ﾁﾗｯ……！？」

歌ってる最中に目撃してしまった天月であった

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