＃282 ページ37
なんだ、あれ。
集合場所の駅でも、新幹線の中でも、Aちゃんの隣には常に山田の姿が。
月曜日、部活に来たAちゃんは、準備室に入るなり頭を下げた。
『先生、ごめんなさい』
「えっ…どうした？」
経緯を聞くと、土曜の電話の相手は山田で、その最中に話しかけたおれの声を山田が聞いていて、勘づいたらしい…
いや、知ってたし。
知ってて話しかけたし。
おれの声って気づかなくても、Aちゃんのそばには男がいるって、自分の入る隙なんてないって気づけって思って話しかけたし。
まさかおれの声って気づくとは思わなかったけど…
涼介には嘘つけなくてって。
相手がおれだってこと、お互いに好きだけど、今は付き合ってないことを話したって。
そこは付き合ってるって言っても良かったのに…なんて思いながら、申し訳なさそうに謝るAちゃんの頭を撫でてやった。
「いいよ、気にしなくて」
『勝手にごめんなさい…でも、涼介、応援するって言ってくれて』
はっ？嘘だろ？
『卒業まで頑張れって。何かあったら相談乗るからって言ってくれました。それに涼介、好きな子出来たみたいで…』
って、嬉しそうに話すAちゃん。
やっぱり好きなんだなー。友達としてだろうけど、大切なんだ。
山田だって、Aちゃんのことが大切だからそう言ったんだろうな。
好きな子出来たなんて、見え透いた嘘までついて。
そう思ったら、自分の大人げない行動を少し後悔した。
のに！
あいつ、なんなんだよ。
明らかにおれへの当て付けだろ。
なんとかあいつとAちゃんを引き離さないと…
携帯を取り出して、メッセージを送る。
〈Aちゃんをおれの席まで連れてきて〉
〈見返りは？〉
〈翔くんの寝顔。それにおれの隣の席は翔くんだ〉
「翔くん、こっち向いて」
S「えっ？」
カシャッ
ちょっととぼけた顔になったけど、まぁ大丈夫だろ。
その画像をこの前撮った寝顔の写真と共に送る。
〈承知しました！〉
返信はえーな(笑)
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作者名：Haruno*
| 作成日時：2017年1月15日 8時
