私の英雄 ページ30
藍が上段から真っ直ぐ降ろしてきた刀を、すぐさま弾き、人形を指から生成する。其れを今度は藍が斬り捨てた。
『懐かしいなぁ、藍と一緒に、刀を振る真似、いっぱいしたよね』
闘いながらも、藍に話しかけ、昔の感傷に浸っているみたいだ。
人形を斬りながら、藍達の様子に目を向ける。
『……もう、戻れないけど。…………藍は、楽しかった？』
「………勿論、楽しかったよ」
そう言って、ザッ、と人形を纏めて斬る。
「朱音君が居たから、私は今此処にいるんだよ。
僕と一緒だ、って言って、笑ってくれた時、とっても心の中が温かくなって、笑って良いんだ、って、思えたんだよ。
……なのに、なのに、どうして私から奪う方へ行ってしまったの？」
『もう、嫌になったんだよ』
そして、初めて朱音琥珀の顔から、笑みが消えた。
『もう嫌なんだよ！……おとーさんと、おかーさんと、古虎と、古月にーちゃん、古野穂、皆鬼にやられて！僕は、一人で寂しかったんだ。心の穴を、誰かに埋めて欲しくて！』
そう、彼が叫んだ途端、人形達が急に力を増し、刀を弾かれた。
(まずい、呼吸を使って倒さなきゃ、藍が！)
一か八かで、呼吸を使わなければ！
「葉の呼吸・弐ﾉ型
緑円！…(じゃなくて、黒円？)」
腰をかがめ、右脚を軸に、ぐるっと一回転し、スネの部分に斬りつける。
見事ピンポイントで命中したらしく、人形が思いっきり転んだ。
「よしっ！……藍、今だ、朱音琥珀に斬りつけろ！」
藍が小さく頷くと、かちゃん、と音をさせ、刀を腰にピタリと据えた。
そう言えば、藍はどんな呼吸を使うのだろうか。
「………縁の呼吸、壱ﾉ型」
縁。相手と、自分をつなぐ糸。
彼女は、アカネコハクの存在だけは、忘れる事はなかったのだ。
「糸繋」
糸が、ピンと張られるように、真っ直ぐ、彼の身体を貫いた。
「………私達は、ずっと友達だよね」
その時だった。
一筋の糸が、藍の身体を貫いた。
朱音琥珀から、生成されたものだった。
『…………………置いて、行かないで』
藍の顔は、笑っていた。
「勿論、一緒だよ」
そう言って、その場に倒れた。
その場が、呆然とする中、丑三つ時の鐘が、響き渡った。
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ココロ - 8000hitありがとーございます！ (2020年4月3日 18時) (
レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - まさかの5000hitありがとうございます。評価も、少しですが上がっていて、嬉しかったです…！ (2020年3月11日 11時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 2000hit,有り難うございます！ (2020年2月29日 18時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 1000hitという文字をこんなに早く見るとは思ってませんでした……ありがとう御座います！ (2020年2月22日 17時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 260hit,ありがとうございます！ (2020年2月21日 14時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ココロ | 作成日時：2020年2月6日 19時
