参 ページ3
月が去っても、僕は、月の言葉が何故だか、妙に頭の片隅に引っ掛かっていた。
紅い着物に、月模様が左胸についていて、藍色の袴を穿いた、亜麻色の髪の青年。
「頭から離れないなあ……」
とても不思議な人物だった。
しかし、いつまでもこうでは、そのまま死んでしまう。
まあ、死ぬのは嫌だし、もう少し本気を出していくか!
***
「生き残った……」
大きく息を吐く。ようやく、緊張から解き放たれた感覚が押し寄せてくる。そこで、月が生き残っているか、ということが、脳内をかすめた。姿が見えない。
「!」
よく見ると、かすり傷だらけなものの、石畳の端っこの方に、黒髪の人と一緒に何か話をしている。
月が、こちらに気づいたようで、僕に微笑んできた。
『お互いに生き残れましたね』
目がそう言っていた。僕も、伝わるように、目に神経を集中させるようにして月を見つめ、頷いて見せた。
「どうした、月」
隣の人が話しかける。こちらは、月とは対照的に、物静かで、少し厳しそうな人だった。
藍色の着物に、抹茶色の袴。その声に月が、
「何でもありません」
と和やかに応じた。
もしかして、彼が月の幼馴染み、太陽だろうか。ふと、そう感じた。
そこに、変なおかっぱの少女が、二人入ってきた。
「おめでとうございます」
そう言われて、改めて、あんなたくさんの人がいた中で、月、(多分)太陽、僕、そしてもうひとり、真ん中からズレたところにいる少女以外、生き残ったものはいないのだと、思い知った。
7人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ココロ - 8000hitありがとーございます! (2020年4月3日 18時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - まさかの5000hitありがとうございます。評価も、少しですが上がっていて、嬉しかったです…! (2020年3月11日 11時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 2000hit,有り難うございます! (2020年2月29日 18時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 1000hitという文字をこんなに早く見るとは思ってませんでした……ありがとう御座います! (2020年2月22日 17時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 260hit,ありがとうございます! (2020年2月21日 14時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ココロ | 作成日時:2020年2月6日 19時