裏昔噺 ページ11
「藍さんって、何処に住んでいます?」
「え……っと、一番東の方の…」
「やっぱり、そうですよね。この昔噺、住んでいる場所は覚えているんですけど、それ以外、その人達は何も覚えていないんです。しかも、私達の住んでいた村があるのは東、そして、その噂ができたのは、やはり、東の果ての小さな街から伝わってきました」
障子が閉められている筈の方を、月は何故かじっと眺めていた。
「藍さんが住んでいた処、東の果てでしたよね。其処」
急に月が真剣な顔をして、
「最近、百年前の被害を振り返すように、また記憶をなくす被害が増えているんです」
と、怪談前の後味の悪さを残すように、ゆっくりと言った。段々、此処がお化け屋敷なのか、藤の家紋の家なのか、区別がつかなくなってきた。
「此処からは、私の勝手な憶測ですが、壱に、藍さんも知らず知らずのうちにその被害に巻き込まれた。弐に、その記憶は、鬼の子分達の大将」
「『忘寺』を倒せば、取り戻される、というわけか」
太陽が、ようやく話が読めたというふうに言った。
「ええ」
「じゃあその鬼を、明日にでも倒しに行こうよ!」
僕は、バッと立ち上がって言った。しかし……
「そうしたいのは山々なのですが……」
「俺たちには、まだ日輪刀が無い」
「そうだった……(泣)」
僕は、刀が無いことで、自分がどれだけ無力になるのかを改めて思い知った。
爺ちゃんからもらった刀、入隊試験の時にボロボロになって、しまいには折れちゃったもんなあ……
その時。
「嗚呼にっちりんとう♪そーれにっちりんとう♪」
まさか、この声は………
冷や汗が出てきた。
間違いなく…………………
「あんのクソ烏野郎〜〜〜〜〜〜!!」
**
思い返すこと、入隊試験が終わり、烏が配られた時。月には毛並みが整った心が清らかな烏が、太陽には無口で静かな烏が、藍には、明るく、すぐ人を茶化す女の烏が(片言)、そして僕には、
「はあああああああああああ!?!?!?」
「はあああああああああああ!?!?!?も何も、俺の言うとおりだロ?」
「だーれがボロ男だ!お前にだけは言われたく無いね!」
「ああん??テメー!誰に口聞いてんダヨ!!」
羽がボッサボサの、チャラい烏。←言葉には気をつけよう!(昔にチャラいという言葉はありません)
僕の着物をバカにしてきた、忘れもしない、あのチャラガラスの鳴き声である。
7人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ココロ - 8000hitありがとーございます! (2020年4月3日 18時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - まさかの5000hitありがとうございます。評価も、少しですが上がっていて、嬉しかったです…! (2020年3月11日 11時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 2000hit,有り難うございます! (2020年2月29日 18時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 1000hitという文字をこんなに早く見るとは思ってませんでした……ありがとう御座います! (2020年2月22日 17時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ - 260hit,ありがとうございます! (2020年2月21日 14時) (レス) id: 7279136435 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ココロ | 作成日時:2020年2月6日 19時