九日目 ページ9
「ほんまなんやって！」
慌ててそう話を続ける鬱。
しかし、誰も取り入ってくれない。
と言っても、その相手は三年生組なのだが。
グルッペンは面倒くさそうにご飯をつまみ、トントンはガッツリとした脂っこいものを口へと放り込んでいる。
オスマンは困ったように鬱を見ながら、特に何も言わない隣のひとらんらんのご飯を摘まみ食いする。
兄さんは興味がないようにコネシマと話を続け、しんぺい神はいつものようにロボロの隣を陣取っていた。
まともに聞いてくれていたのは、エーミールだけ。
それも過去のことである。
エーミールは始めこそ聞いてくれたものの、途中で「話になりません」と切り捨て委員会をしに行ってしまった。
その話とは、Aのこと。
思い出したように鬱が自身の先輩であるAの話をすると「そんなの知らない」と切り捨てられたのだ。
二年生である鬱に対し、先輩などと言ったら三年生となってしまう。
しかし、そんな人居ないと言われては反論するしかない。
確かにAは居たのだ。
会話だって覚えてるし、昨日なら殴られたのだ。
感覚もあった。
話を聞いてもらえず唇を噛み締める鬱を可哀想に思ったのかオスマンがひとらんらんから摘まみ食いするのを辞め鬱へと向き合った。
「大先生、俺今日大先生の部屋泊まってええ？」
「え、なんで？」
いきなり言われて驚き目を見開く鬱。
「俺が見たるって。ほんまに居るか。
てか、ベランダからやって来たんやろ？どうやって鍵開けたん」
鬱は少し考えてから、「確かに」と頷いた。
「そういうとこやぞ」
トントンは「きちんと状況整理しろや」と弁当を包みながら続けて言った。
「で、大先生。ええ？」
「えー...ええ、けど」
一度悩んだようにしたが、鬱は頷いた。
その結果か、オスマンは満足そうに笑った。
「ひとらんも行こうや」
「え？俺は良いって。」
「女の子やで？」
「...まぁ、仕方ねぇな」
そう言うも本心は最近関わりを持てていない女性を見たいという気持ちがあることを否定できない。
「...ほんまに行くんか？せやったら、俺もいきたいんやけど」
そう手をあげたのはシャオロンだった。
「もう、誰だろうがええよ」
疲れたように鬱は息をついた。
「よし」
ガッツポーズをしたシャオロン。
そんな四人を遠くからゾムが見ていたのは、誰も気がついていなかった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
