五十日目 ページ50
皆がリビングに入ると、見るからに汚かった。
同じ寮とは思えないほどの広さだというのに、物の散らかりのせいで空間がもったいない。
『掃除ぐらいしてよ...汚い、やだ』
「ほら、スリッパはきぃや」
『鬱が触ったの使いたくない』
「バイ菌呼ばわり！？」
好き勝手言っているAを他所にして皆は辺りをキョロキョロと眺めていた。
「なんか飲む？コ一ラあんで」
『コーラやだ』
「Aちゃんは何飲みたいん？」
『珈琲』
「あんで」
『は？珈琲とか嫌だし』
「ほんま可笑しいで？どうしたん？誰か保護者〜」
会話の成り立たないAを前に誰かに助けを求めようと振り向いた鬱だったが、誰もが無視をした。
仕方ないと出てきたのはゾム。
「ほら、Aさんレモンティー好きやろ？」
「レモンティー？あんで」
「んじゃ、それで。俺もAさんと同じでええよ」
ゾムはそう言いAを落ち着かせようとソファーを綺麗にして座らせる。
ゾムたちは連絡が来て、そちらへと目を向ける。
そんな中、Aは鬱へと話しかけた。
『なんで掃除しないの』
「めんどいねん」
『前は綺麗にしてたじゃん』
「Aちゃんが来とったからな」
Aは『ふーん、』と頷いたが『うぇ、』と少し嗚咽を漏らす。
「ん？どうかしたん？」
『ぃや...なんでもないわ』
Aは痛む頭を押さえつけ、面倒臭そうに目線を反らした。
しかし、先程までと違う強い痛みに少しだけ脳が正気に戻った。
こそこそと話していた皆だったが、鬱が間に入ってきたことによって声をはっきりとさせる。
「ロボロがトイレ行きたいって」
「あぁ、ええよ」
「あぁいい？」
「ええよ、家トイレットペーパートリプルやから」
どや顔を決めた鬱に『馬鹿じゃないの？』と毒づいたA。
しかし、生憎にもその声は聞こえなかったようだ。
「邪魔では？」
最もなことを言うトントンに頷き、コネシマは「トイレ詰まるで」と続けた。
「じゃあ大先生、ちょっと俺腹へったからキッチン荒らしていい？」
「ええよ、何でも食うて」
「ほんまに？飲みさしのコーラ蓋開けっぱなしで置いてたりせぇへん？大丈夫？」
トントンは疑いの目を鬱へと向ける。
「平気であるわ...」
苦笑いをした鬱に『何処から仕入れてんの？』と質問を加えるA。
「まぁ、先生に頼んどるわ」
『賄賂？』
「そんな言い方せんといてよ」
Aは笑って誤魔化した鬱をただじっと睨み付けるように見つめた。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
