三十二日目 ページ32
「...まぁ、撮影している人から情報は貰えたし、学校に送るね」
ぺいんとの言葉にゾムは肩を揺らした。
「ほんまに言うてます？」
「当たり前でしょ？...死神君、頼める？」
「え、歩きですか？」
「当然。頼んだよ」
ぺいんとから死神へと受け渡される。
ぺいんとの古くからの友人で、ゾムと鬱とも知り合いだった。
他にも二人ほどいるが、一人は警察、もう一人は陸上自衛隊ときいた。
といっても、もう一人の警察はこの場に居ないようだが。
「しっかり怒られてくださいね！」
「嫌やぁ」
死神が学校への帰り道、そう言えばゾムは嘆いた。
憎たらしいほど暖かい夕日を背に学校へ向かう。
ついて直ぐに、生徒指導のばどきょーへと引き渡され説教が始まった。
「はぁ...ほんま、何やっとんねん。馬鹿なんか？」
「ちゃいますよ、あれはあっちが...」
「そういう問題やないやろ」
ばどきょーの睨みに目線をそらすゾム。
鬱はただ黙っているだけだった。
ばどきょーはそんな静かな鬱に疑問を感じ、目を向ける。
「鬱さん？...おーい、鬱さん？」
肩を揺らし顔をあげた鬱にばどきょーは目を丸くした。
呼ばれてすぐだったからか、顔は生気を感じさせない、光のない瞳をしていた。
直ぐにいつものような作り笑いに変わったが、ばどきょーは何を思ったのか二人を"一ヶ月間夜間授業"とし部屋に返した。
寮へと戻るとき、二人は何も話さずにそのまま別れた。
ゾムは部屋にはいるなりベッドに飛び込んだ。
「...無理やった」
鬱を少しでも元気付けさせようと外へ出てみればこれだ。
失敗に終わってしまって、更にばどきょーとの話していたときの顔を見るに自分を更に追い込んでしまったかもしれない。
「なんで、失敗してまうん」
もともと末っ子気質で人を救ったり支えるのが苦手なゾム。
考えた末での行動だったが、無駄に終わってしまった。
「もう嫌やぁ〜」
無理ぃ、と半泣きで枕に顔を埋めバタバタと足を動かすゾム。
その時、ドアからコンコンコン、と三度控えめなノックが聞こえた。
「開いとんで」
体を起こしながらドアへと目線を向けると、開いた先にはロボロが立っていた。
「なんや？」
「お前、うっさいで。隣まで聞こえてきとんねん」
「マジかよ」
独り言を聞かれていた恥ずかしさからか、顔に熱が集まるゾム。
「まぁ〜...なんや、どう大先生関係やろ。俺にも手伝わしてくれ」
そういうとは思っておらず、ゾムは目を丸くさせるばかりだった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
