三十三日目 ページ33
『ふーん...で、そんなに悄気てんの？』
一方鬱の部屋にて話を聞いたAは鬱の部屋で寛ぎながらそう言った。
『それはアッチが悪いし、いちいち考え込まなくていいよ。大丈夫、鬱は悪くない』
踞ってる鬱の頭を撫でるA。
「...もう、無理や。俺、あかんわ」
鬱さが増している。
承認欲求が強いんだろうと考え、Aは褒めまくる。
『鬱はきちんと周り見てるし、あっちがぶつかってきたんだから悪くないよ。
それに、事を大きくしないように直ぐに謝ったのも偉い！
ゾムに守ってもらったけど、きちんとゾムにも謝ったんでしょ？偉い偉い』
幼い子供に対するような行動ではあるが、それに鬱は救われていた。
『でも、帰りにゾムやばどきょー先生に謝罪できなかったのは反省点だね。また明日、謝りに行きな』
「うん...」
鬱は見えないように涙を拭い顔をあげた。
「なぁ、Aちゃん」
『ん？なに？』
「Aちゃんは、いつもどこで寝とるん？」
Aの動きが止まる。
鬱はしてはいけない質問だったか、と不安で顔を歪める。
『ぁ、嗚呼、ごめんね。悪くはないよ。
私は別にどこにもいなくてどこにでもいる、みたいな？』
鬱は分からないと首をかしげた。
『う〜ん、そうだなぁ...私の存在が消える感じ？
前に皆と会ったときは気を張ってたからか平気だったけど、普段は力が抜けて倒れていくんだよね』
鬱は興味深げにその言葉を聞いた。
「意識を失っとるってこと？」
『まぁ、そんな感じ。
最後の記憶の場所はバラバラだけど、目が覚めるといつも...
この学園の森あるじゃない？あそこの中心にいるの』
鬱は「ああ、あそこ」と頷く。
森、といっても女子寮と男子寮の間に隔たれている木々たちだ。
「...Aちゃんは、寂しくないんか？」
『なんで？』
急な鬱の質問にAは首をかしげた。
「いつも一人なんやろ？
俺が来る前も、そうやった...ちゃうん？」
鬱の言葉に目を丸くさせたAだったが、すぐに微笑んだ。
『一人じゃないよ。私は、一人じゃない。
柄でもないけど、人が死ぬのは、忘れ去られたときだと思うんだよね
だから、誰かが私を知っている以上、私は存在してるし、一人じゃないの』
鬱はその返答に驚いたのか口が開きっぱなしだった。
その様子にAが笑えば、鬱はハッとして恥ずかしそうにはにかんだのだった。
「...強いんやな、Aちゃんは」
鬱が呟いたその言葉は、Aへと届いたが返事はなかった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
