三十四日目 ページ34
夜遅く。
ブラックのような状態である教師数名は職員室に残り残業をしていた。
「そういえば、今日うちの鬱がお世話になったんだっけ？」
らっだぁが連絡を取っているのはぺいんとたち。
後ろで他三人の声も時々聞こえてくる。
スピーカーで話しているが、皆知り合いだからか何も文句を言わない。
「"そう、ゾム君と鬱君ね。映像見たら恐喝されてたね"」
「あらあら」
らっだぁは特にアクションするわけでもなくそれだけを返す。
自分から聞いたと言うのに興味がなさげだ。
「というか、ゾムはレウさんのクラスでしょー？」
「そこで俺に飛び火すんの？」
驚いたように声を漏らすレウクラウド。
赤い瞳を泳がせながら「まぁ、そうなんだけどさ」と呟いた。
「"...あ、そういえばクロノアさん何か言うことがあるって言ってませんでしたっけ？"」
通話先で会話が行われ、話す人が変わったようだ。
「"あ、どうも、クロノアです"」
「クロノアさん、久しぶりですー」
返すのはやはりらっだぁ。
「"話なんですけど、最近全国的に苛めが多いようなので、気を付けてください"」
クロノアの言葉にらっだぁは作業の手を止めた。
「...ﾗﾀﾞｵｸﾝ」
らっだぁの異変にいち早く気がついた男がらっだぁを緑の瞳で見抜く。
らっだぁは慌てたように「そうですか、ありがとうございます」と返した。
「"らっだぁさん、聞こえますか〜？"」
「あ、トラゾーさん。自衛隊は？」
「"やめました！"」
「え？」
「"怪我しちゃって、続けられなくなっちゃって。でも、警備会社に就職できたので、そちらの高校任されまして"」
「あー、そうだったんすね」
トラゾーは笑い話だがらっだぁたちは驚きすぎて反応が薄くなってしまっている。
少し話して通話を切れば、すぐに静かな空間は戻ってきた。
「...ﾗﾀﾞｵｸﾝ､ｲﾂﾏﾃﾞ縛ﾗﾚﾃﾙﾂﾓﾘﾅﾉ」
「...ごめん、緑くん。ちょっと黙って」
いつもより口調の強いらっだぁに誰も何も言えなくなる。
「分かってる。Aはもういないってことは分かってるし、前に進まないといけないのも分かってる。
それでも、辛いんだよ...」
誰に言うわけでもなくらっだぁはそう言う。
それを見ていた緑色、ばどきょー、レウクラウド、コンタミは少し切なそうな表情を浮かべた。
「...もう、あんな被害者を生まないって、決めたんだ」
自分に言い聞かせるらっだぁ。
彼を動かすものは何なのか。
それは、らっだぁにしか分からないのだった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
