三十日目 ページ30
「...え？買い物？」
「おん、どう？たまには。」
放課後。
直ぐに帰ろうとするであろう鬱対策としてダッシュで用意を終え昇降口へと向かったゾム。
思っていた通り、鬱は昇降口で靴を取り出していた。
目を丸くする鬱。
少し視線を泳がせてから、「食害せえへんのやったら」と了承してくれた。
「よっしゃ、ゲームしようぜ、ゲーム！」
「ゲーセン行くんか？」
「何する？ゲーセン久しぶりやから、全部回りたいわ」
「金ないわ」
「ええよ、奢ったるで」
「ほんまゾムはどっから金出てきとんねん」
呆れるようにため息をつく鬱を見て片手でお金のサインをするゾム。
二人で外出許可表を提示して学校外へと出る。
「久しぶりやなぁ」
「ほんまに」
キョロキョロと辺りを見渡す。
寮があるため、学校外に出ることなど帰郷以外特にない。
たまに知っていた店が潰れていたり、新しいマンションが出来ていたりして驚くばかりだ。
「あ、あったで」
新しそうな大きいゲーセンに興奮するゾム。
鬱は「おお、」と感嘆の声を漏らしていた。
「何から行く？」
「無難に時計回りでええんやない？」
「まぁ、せやな」
鬱の言った通り左の方から進んでいく。
奥には鬱の好きな音ゲーがたくさん置いてある。
それを横目にクレーンゲームを見ていく。
鬱は若干そわそわと音ゲーの方を見ているが、ゾムはクレーンゲームから中々離れようとしない。
「...あ、大先生やりたいのあったんやったら行ってもろて」
「あ、ほんまに？ありがとう」
鬱は直ぐに音ゲーの方へと行ってしまった。
後で追いかけようと思いながらもクレーンゲームへと目を向け直す。
「...ふは、これ大先生みたいやん」
そこにあったのは黒眼鏡をつけた孔雀のキーホルダー。
「一発で取れるんかな...」
コインをいれてゲームを開始する。
肝心なところでコロ、と転がるキーホルダー。
ゾムは長期戦の後、やっとの思いでそれをとった。
「漸くか...」
ふぅ、と謎の達成感を感じながら鬱の元へ行こうと音ゲーの方へ向かう。
近づくにつれうるさくなる音楽に顔をしかめながら奥へと進む。
ここら辺で見えんくなったよな、とゾムが辺りを見渡すと大声が聞こえてきた。
「す、すんません」
その謝罪の声は明らかに鬱のものだった。
はっと目を向けると難いのいい男とぶつかったのか、尻餅をついている鬱。
その難いのいい男は、鬱の前に仁王立ちしていた。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
