二十日目 ページ20
『...兄に会ってほしい、ですか？』
コンタミと話していたAはその話をまとめそう聞く。
コンタミは頷き、「駄目かな？」と首をかしげた。
『...見えるか、分からないですし』
「そうだよねぇ」
困ったように笑ったコンタミ。
Aは申し訳なさそうに目を反らした。
「...とりあえず、見える人と見えへん人の違いを確認してけばええと思いますけどね」
「...うん、そうしていこうか」
そう話がまとまり、オスマンは授業に遅れてしまうと焦って部屋を出ていく。
次の授業がないのか、コンタミは近くの椅子をカタカタとずらし二つ用意した。
片方に座り、もう片方に座るよう促されるA。
おどおどとしながらも座れば、コンタミは満足したように笑った。
「らっだぁ、俺のせいでって大分心に来てたみたいなんだよね」
コンタミはそう言いながらノートを開き採点し出す。
『えっと...知り合いでしたっけ？』
「ううん。俺はこの学校で先生としてはじめて。」
『...そうなんですね』
つまり、大人になっても後悔し続けていたということ。
Aはなんとも言えずに目線を反らした。
「ふはは、らっだぁの言ってた通りだ。」
笑い出したコンタミに不思議そうに首をかしげるA。
笑ってた理由を言おうとコンタミが発言するが、その言葉はチャイムに重なり聞こえなくなってしまった。
『えっと...？今、なんて？』
「いや、何でもないよ」
コンタミはさっきの発言をなかったことにして、再び作業を始めてしまった。
静かになり何か話題を、とAは頭をぐるぐると回し口を開く。
『兄は、どんな場面で私のことを？』
「ふふ...聞きたい？」
『...はい、気になりますね』
コンタミが手を止めAへと向き合い話始めようとすると、急に教室のドアが開いた。
Aもコンタミも体を強張らせる。
入ってきたのは先生で、それを見たコンタミは彼の名前を口から漏らす。
「...きょーさん」
そこにいたきょーさんことばどきょーはコンタミから視線をずらした。
「なんや、見たことある気ぃするけど、うちの生徒やないみたいやな？」
「きょーさん、覚えてないの？」
「何が？」
「いや、やっぱいいや」
二人は話しているが、その間にもばどきょーはAとの距離を詰めていた。
「...あー、お前、あれや。
猿山Aやな」
『...はい。あなたも兄の知り合いですか？』
「おん、せや」
深海の瞳と稲妻の瞳が交わった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
