十九日目 ページ19
「はい、この技法ね、わかる人〜」
黒板にイラストを書いていた先生が振り返り生徒たちを見る。
誰も手をあげていないのを見て先生は苦笑いし、「難しいかな？」と声を漏らした。
『...オスマン』
「ぇ、なに？」
こそこそと二人で話す。
『彼処の答え、ノートに書いてあるよ』
「嘘」
オスマンは慌ててノートを見返す。
説明するのが下手だから、ノートに指差して見せればオスマンは納得し、控えめに手をあげる。
Aもオスマンに合わせるように黒板へと向き直ると、一瞬先生と目があったような気がしてドキッとする。
オスマンが答えを言えば、先生は微笑みながら「正解」といい、生徒たちからは確かに、と頷く様子が見える。
『頭鈍ってないみたいでよかった〜』
そう言い安堵し笑うAを見てしんぺい神は微笑んだ。
あっという間に時間は過ぎ、授業が終わる。
Aはどこか物足りなさそうな顔をしていたが、すぐに諦めた表情をした。
「あ、オスマンさん」
先程まで授業をしていた先生がオスマンを呼ぶ。
「なんですか、コンタミ先生」
オスマンの返事に目を細めるコンタミ。
「仕事...というか、先生の手伝いしてくれないかな？」
「ええですよ。このノート持ってけばええんですか？」
「うん、そう。ごめんね」
「いえいえ。大丈夫ですよ」
オスマンが両手にノートを抱く姿を見ながらも、手伝うことができずに隣に並ぶA。
A自身、コンタミに気になることがあったからだろう。
「今日、よく答えられたね〜」
廊下、コンタミとオスマンはノートを両手に歩きながら話に花を咲かせる。
「あ、此処の部屋で」
「空き部屋ですか？」
「うん。結構光が入って、居心地が良いんだよね」
「職員室北にありますもんね」
頷くオスマン。
空き室に入りノートを集める二人を遠目に見ていたAだったが、ふとした瞬間肩を揺らした。
それもその筈。
コンタミがAを側へと手招いたからだ。
オスマンもその様子に目を丸くさせている。
「おいで...Aちゃん、だよね」
唖然としたAとオスマンの顔を見て笑うコンタミ。
「ごめんね、見えてるよ。らっだぁから話は聞いてたし、名前は知ってる」
コンタミがAへと近づいていく。
少し警戒して数歩下がるA。
オスマンは慌ててそんな二人の間に入った。
「危害は与えるつもりはないんだけど」
そう言って困ったようにコンタミは笑った。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
