十四日目 ページ14
「ロボロみたいに自分の良さを活かせるような性格でもないし、兄さんみたいに皆を支えられへん。シャオロンみたいにひたすら前を向くなんて到底無理や。
ぺ神みたいに皆を救う力は持っとらん。
エーミールみたいに博識やないし、ショッピ君みたいに愛されるような性格やない！チーノやって、いざというときは皆を引っ張りあげる力があるんや！
なら、僕は？
僕には何があるんや？
アイツらみたいに力はないねん、ぼくには！」
Aが違和感を覚えしゃがみ鬱を見上げると、鬱は目から涙をボロボロと溢していた。
『鬱...』
「いやや、一人にせんといて...」
しゃくりあげながらも涙を拭う鬱。
丸められた背中は、あまりにも脆く小さかった。
「何度も...っ、死のうと思ったんや...」
鬱の言葉にAは手を止める。
「でも、怖かったんや...俺は、死にたいんやない...ただ、生きるのが怖いだけやねん。
生きて、自分を見失うのが怖いんや...」
『鬱』
うじうじとしている鬱と対称的にAはハッキリとした声で鬱の声を遮る。
『死にたい、って言った？』
涙でグシャグシャな鬱は顔をあげるも、Aと目が合わず鬱は困惑の表情を浮かべる。
『死ぬのは、怖いよ。
息が荒くなって、体が冷えていくのが分かるの。
なにより死ぬんだな、って悟った瞬間体から力が抜けていくのも怖いよ。』
まるで経験したことがあるような言いぐさに鬱は「Aちゃん...？」と声を漏らした。
『...で、そこにいるのは誰？鬱の友達だよね』
Aは鬱の後ろにある扉を睨み付けた。
「なんや、バレとったんか」
「ゾム...？」
ゾムと呼ばれた少年が近づいてくる。
「どーも、Aさん」
業とらしく、ふざけたように名前を呼ぶゾム。
Aはただ、そんなゾムを見ていた。
「ゾムさん、いつの間に...」
鬱は震える声を絞り出す。
ゾムは困ったように笑い、「なんでそんな怯えんねん...悲しいわ」と声を漏らした。
『はじめからいたよね。...というか、ずっと私のことつけ回してどういうつもり？』
「アンタが心配で」
『なんでさ』
「鬱を食いそうやん」
『は？』
意味が分からない、と首をかしげるA。
鬱は「う"」とダメージを受けたような声を漏らすも、直ぐに食べられる方が自分だと気がつき不思議そうにする。
「アンタらアホか...
Aさんが幽霊やから、連れてかれるんやないかってこと」
わざわざ説明したゾムに、漸く意味が分かったと頷く二人だった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
