74個 ページ24
sho side
可笑しい、可笑しい、可笑しい。
俺の頭の中にはその単語だけがぐるぐると回っていた。
父さんに頼まれてお使いに来ただけやった。
週末だからか、異様に多い人影にうんざりしながらも大きなデパートに入った。
少し歩くと遠くに見えるA。
友達と来とるんかな、とか思っとるだけやった。
そのときは。
人と人の間から見えたのは、Aとよう分からん男やった。
少し気まずそうな、恥ずかしそうな感じで話す二人には、初々しさを残すカップルのような雰囲気が溢れとった。
Aがそんなことをするような子やないって分かっとるのに、目は離せへんかった。
少し照れるように笑うAに、その思いは砕けた。
俺の前で、そんなふわっとした笑みをしたことあったか？
さらに、そのあとAは男の頭に優しく手を乗せた。
...俺は、遊びやったん？
変に考え始めた頭では、戻ることは出来なかった。
絡まった糸は中々ほどけなくて、どうなっとるのかが分からんくって。
気がついたら別のところに居った。
ハッとして、どうすればええのか分からんくて...
気がついたら、大先生に連絡しとった。
簡単な文章。
"お前は、もし本命が浮気しとったらどうする？"
ボーッとする頭では俺が送ったと言うのにそれの意味を理解ができなくて。
既読がついて直ぐに返信が来た。
"別れるんじゃない？それか､縛るか｡辛いじゃんか､その立場にずっと居るのは"
大先生とは思えないほど真面目な文が返ってきた。
別れる、か...縛る？
メンヘラみたいやん
そう思い顔をしかめると、それを知っているかのように大先生から続けて連絡が来た。
"話聞いてやるで､家に来るか？"
直ぐに"今から行く"とだけ送りポケットにスマホを突っ込んだ。
なぁ、Aはどうしたかったん...？
何も考えられない頭には、答えの返ってこない疑問しか湧かない。
俺のこと、嫌いやったんか？
あの男の方が好きなん？
なぁ、俺がAのことを好きになったんは、間違いやったんか？
溢れだす疑問。
頭が痛くなってきて、胸が苦しい。
大先生の家につきインターホンを鳴らすとすぐに大先生は出てきた。
「ぁ、だいせん、せ...」
なぜか、胸にためていたものが溢れたような、ダムが崩壊するような...
そんな心の音と共に涙が溢れ出てきた。
大先生は驚きながらも、俺を家の中へと招いた。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年1月14日 22時
