73個 ページ23
「よーし、着いた！行こうか、と言いたいところなんだけど...」
ちょっと貯金下ろしてくるね、と苦笑いの色盲さん。
お金がないんやな。
申し訳ないわ。
shr「えーと...何色が好きなんすか」
よくある、はじめて会う人にする質問を投げ掛けられる。
頭に思い付くのは彼の元気な明るい笑顔。
『黄色、かな』
へら、と笑う。
すると少し意外そうな顔をする。
...そんなにか？
『意外？』
shr「まぁ...どっちかっていうと、青とか好きそうですけどね」
『まぁ...青もいいけど、好きなのは黄色だからかな』
良く分からないと首をかしげるシャケ君の頭を撫でる。
『分からなくていいよ』
それをやったあとに、失礼なことをしたかと思い慌てて手を離す。
shr「あ、ぇ？」
驚いた表情で顔をあげたシャケ君。
理解できる時間が短かったのか、少し反応が遅いようだ。
『ご、ごめんね？』
shr「え、あ、いや」
大丈夫です、と混乱したように言ってくるシャケ君。
...困らせてもうた。
視界の端で何かが揺れた気がして、そちらに目を向ける。
角で何も見えないけれど、何か、気になった。
shr「...どうしました？」
『あ、いや、なんでもないよ』
「ごめーん、待ったー？」
遠くから手をあげながら走ってくる色盲さん。
目立つからやめてほしいんやけど...
「さーて、何色が好き？何色チョイスで行く？何から買いに行こうか？」
質問責めにされ固まる私に呆れるシャケ君。
shr「いきなりそんなに質問しても困っちゃうでしょ。
好きな色は黄色だって、ほら、被らないじゃん、良かったね、まずはベッド辺りでいいでしょ」
シャケ君がまとめてくれて、決めてくれる。
楽や...
「Aちゃん、黄色なんだね！
俺は赤で、シャークんが緑でしょ？信号機だ！」
ニコニコと笑う色盲さん。
母さん、こんなにハイテンションな人にようついてけれたわ...
「俺はシャークんに赤が好きになってほしかったんだけどねー、緑が好きなんだって。
でも、きちんとヘッドフォン赤にしてるの、親思いでしょー？」
shr「うるさい、行くぞ」
恥ずかしがっているのか、こちらを見ずにそう答えるシャケ君。
結構かわいらしいところもあるんやな。
ここまで来て悪いが、シンプルで無難なものを選んでいく。
色盲さんはかわいいものを選ぶと思っていたのか、「いいの？いいの？」と何度も聞いてくる。
その幾度にシャケ君に「うるさい」と言われているのは、少し面白かった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年1月14日 22時
