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「世界中を巡るなら、次は”あの国”がいいわよね。」
「”あの国”？」
「ええ。うちの発着場から次に出る1番早い便は”アイツ”の国行きよ。」
ヤムライハはそう言いながら、通信器をかけた。
「あっ、あんた？今 何してるの？…謁見中？うそよ。どうせ酒飲んで女の子はべらせてるんでしょう？
…んっ？ねえ、、今、、声が…」
「？」
どうしたんだろう、とアリババは静かにヤムライハの電話をかける後ろ姿を見ている。
「……！Aちゃんじゃない！次はそこに行ってたのね!?」
「!?」
バッ、とヤムライハの方へ駆け出そうとしたアリババを、ヤムライハはピシッと手で止めた。
そしてヤムライハは声のトーンを変えることの無いまま、爽やかに話し始めた。
「え？もちろん！この前あったばかりじゃない、私は元気よ！Aちゃんは？…そう！確かに声も元気そうでなにより！
それより、今何故そいつのところにいるの？それって…ただの「勘」？」
普通に話すように見せかけ、ヤムライハは彼女の確信をつく質問をした。
アリババも、その返答がどんなものかとドキドキと静かに待った。
なぜ、彼女はアリババの行く先々に先回りして、彼を少し助けるような真似をするのだろうか？
なぜ、彼女はアリババに会おうとしないのだろうか？
助けなんて必要ない、アリババは、ただ彼女に会いたいだけなのに。
助けたいのなら、彼の隣で一緒に煌帝国を支えるだけでも十分なのに。
「……え？…「気づいたの」って…なんのこと、、？私はただ、あなたの行動の意味を知りたくて……」
なんだか不穏な空気に、アリババは我慢できなくなりヤムライハから通信器を奪い取った。
あっ！と声を漏らすヤムライハを無視し、アリババは通信器を口に近づけた。
「おい！Aなのか!?そこにいるんだろ!?」
［……］
シーン…ツツ、ツツー…
切られてはいないのだろうが、通信の向こう側は静寂だった。
ヤムライハが心配そうな顔でアリババを見ている。アリババはただ一言でも彼女がいるという事実が欲しかった。
「なあ……どうしたんだよ？俺の事、嫌いになっちまったのか？」
［…］
それでも返事がない。
悲しかった。今までの彼女ならきっと、そんなことないよ！と被せるようにしてすぐ答えてくれると思ったのに。
「…なあ、おまえ、なんで俺の手助けをしてるんだ？ありがてえんだけど、一度でも会ってくれなきゃ、、色々聞きたいことが溜まってんだよ…」
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年6月30日 21時
