本気.29［マギ］ (ページ22)

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そのため、自分に忠実な「依存状態」を作ることを選んだのだ。
白龍は短時間であっても彼女がどんな風になるのか気になったし、今はそちらの方が都合がいい。
そして、もし「依存」が解けなくとも…構わない。

「っ、A！俺が分かるか？」

パッと笑顔で両肩を掴んだまま彼女に言うが、彼女は涙でグチョグチョの目を開いて顔を歪めるだけだった。

「知ってるよ。私の事嫌ってたじゃん。確かに事実だったけど、事実なら尚更私に何を求めるの？1度突き放したなら、近づかないでよ！」

「!!?」

バキッパキパキッ

Aはそれでも心のどこかが、彼のことを受け入れようとしてしまっているのか、彼を見たくないように目を瞑り、彼の手を握った。
すると氷が走って、驚き力が緩まったところを掴んだまま横に振り彼からの拘束を解いて、立ち上がった。
それでもまだ体はふらついていた。

本当にそれでいいのかと、自分の何かが語りかけている。

アリババの腕の氷は直ぐに溶けて水になった。彼女の決心の弱さが現れていた。

Aはバッと振り返ると、白龍たちと目が合った。

ハッとする。さっきまでの恐怖を滲ませる笑みはどこへ行ったのか、彼女を誘い込むように優しく微笑んでいた。

そこでさっきまでの心の霧は薄れた。
やはり彼しかいない、と脳が言っている。

1歩、踏み出した。

「A!!」

立ち上がり手を伸ばしたアリババから逃げるように、早足で２歩３歩と歩き出した。

「A！辞めろいくな！俺はお前のことを嫌ってなんかいねえ！目を覚ますんだ！」

Aは振り返らぬままぐっと拳を強く握って

「嘘つき！！！」

と声に出した。

アリババは怒りが湧いた。こんなにするまで、こんなに彼女を追い詰めるまで白龍は一体どんな残酷な過去を見せたのだろうか？
人生そのものを否定するようなものだったのではないだろうか？

「Aおねいさん！！！！！」

ぴた、と足を止めた。

白龍とジュダルの元に、あと3歩ほどで着く時だった。
彼女はゆっくりと振り返った。
必死なアラジンの顔を見て、顔を歪めた。

(なんでそんな顔するの……？私は何かを忘れているの…？)

ぐいっ

余計なことを考えさせないかのように、白龍が彼女の腕を引くと槍の持たぬ方の腕で抱きしめてみせた。

「”おかえり”、A。」

耳元で優しく聞こえてくる心地の良い低い声に、Aは安心した。
そうだ。やはり自分の帰るべき場所はここしかないのだと。