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「いつから、そんな、そんな目をするようになったの……!!!白龍!!」
「A……」
アリババは驚いたようにAを見る。
彼女は強く彼の瞳を見つめた。
彼もまた、彼女のいつまでたっても穢れないオッドアイを見つめた。
「わたしは……わたしは、わたしは、あなたのそんな目、嫌い！」
ピク
「大嫌い！嫌い嫌い嫌い嫌い!!」
「ちょ、A」
「けど。」
柔らかく優しく親指が白龍の目の下をなぞった。
白龍はただ、涙をうかべ悔しそうな辛そうな顔をするAを見つめた。
「貴方が、生きたいように生きていて、自分の「幸せ」のために頑張れるようになったなら、私は喜びたい。」
「!?」
アリババは意味がわからないという顔をした。
「どうなの？白龍……」
「……」
「貴方、今、自分の幸せのために頑張れているの？それとも、その進む力は、世界のため？
ねえ、どっちなの？」
「……どっちもですよ、A殿。」
白龍はフッと笑い、彼女の流れかけた涙を親指で拭ってみせた。
「あなたはね、ウザいんですよ。」
「……え？」
お互い相手の頬に手を添えるような不思議な形のまま話が続いた。
「アリババ殿と違い、あなたは、偽善者になれない。」
「……？」
意味がわからないと彼を見る。
その黒い目に吸い込まれそうになる。
「自分の「使命」のためだと思って動いてるみたいだが、あなたは優しすぎる。人に心を動かされすぎている。だから、使命など忘れ、1度助けたいと思ってしまった人への責任と罪悪感を胸に、自然と、本気で、相手に同情し、分かろうとしてしまうんですね。抗えない。そのことから。
あなたはある意味「シュバリエ」に向いていない。1人に肩入れしすぎるから。」
Aは目を見開いた。するりと彼の頬から落ちた手を、白龍はガシッと握った。
「あなたは「世界」なんて救えない。その変わり、一人一人を愛してしまう。助けようとしてしまう。1人の小さな「幸せ」のために、あなたは「世界」を滅ぼすだろう。」
それは、アリババと真反対なのだと言っているようだった。
「だが、私はそんなあなたが好きだ。」
「!!」
バッと引いた掴まれた手は、ギチチと強い力で動かせもできなかった。
「何度も言いますよ。確かに俺は、このまま「幸せ」になれるのかわからない。自分の欲望を叶えたら、恨みを果たしたら、やっと「まし」になるだけだ。やっとそこで、本当の俺を出せるようになるだけ。」
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年5月8日 23時
