本気.29［マギ］ (ページ2)

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「…A。」

名前を呼ばれて、Aはゆっくりと目を開けた。酷く悲しそうなつらそうな顔をしていた。

ダメだ、戦だけはダメだなんて言えない。
そうなのだ。白龍は…王の器では、ない。

このような横暴な手では、いけない。

「今回呼んだのも、これを想定しての事だった……」

「……」

顔を上げて、眉を下げたまま紅炎を見上げる。

「貴様は、先程も言った通り「煌帝国」とは無関係だ。

…だが、貴様も幼い頃から国を支えてきた身として、、手を貸してくれないかと思う。」

「……え？」

「こちらの味方になれということではない。「シュバリエ」として…国の内乱の中間者を担ってほしい。」

「……は？」

眷族たちも紅覇も驚いているようだった。

「何を言ってるんですか？だって……いや、確かに、戦は止めるべきですが……」

「今更、おまえの憎んだ国のために力を貸してくれなんて言う日が来るとは俺も思わなかった。」

「…でしょうね。」

意味がわからないという顔をしたままハッと鼻で笑う。

「……おまえは…”全てを見る”ことができる。どちらかの味方につけというわけじゃない。ただ、見ていて欲しい。国の行方を。

1度は、国のために心を捧げた身として。」

「……っ!!!」

(ズルい、ずるいわこんな人!!!見るだけとか、そんなの、断る理由もないし、こうやってずっと絶対王者っぽかった人から頭を下げられるのはむず痒くて嫌いなの…！)

Aは俯くと、机に手を置き、ユラリと立ち上がった。
長い紅髪で顔は見えない。

「…見届けるだけなら、そりゃしますよ。なにより、あれだけ責任感じてる訳ですから。私だって戦は見て見ぬふりできません。しかし、今回の内乱は、どちらか勝敗がつかなければ終わりがないでしょう？」

「…………」

「……はあ、わかりました。努力はしますけど、もし用事があったらそっち優先するんで。」

「……嗚呼。」

(えっ、炎兄より用事優先する人初めて見たけど！)

「……感情を抑えることが苦手な馬鹿な私の、手出し口出しは？」

嘘つけ、得意なくせにと紅覇は思いながらも、紅い髪から貞子のように覗かせた紅い目を見てやれやれと微笑んだ。

「…………さあ？おまえは、国とは「関係ない」からな……

俺がどうこう言えることでもないんではないか？」

「……」

＿肯定。

子供なら泣くであろう小さな笑みを浮かべる紅炎と同じくニヤリと口角をつり上げるA。

(ウッワー、2人とも、敵に回したくないな、僕なら)