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俺は、紅徳が疎んでいた全皇帝の息子ということで、まともな官位も、軍での地位も、皇子としての直割地も何一つ与えられなかった。
監視され、城の片隅で槍術の鍛錬と学問に時間を費やすのみ。
姉も同様であった。しかし転機が訪れた。
ジュダルにいざなわれ、姉 白瑛は「金属器」を手に入れた。
その力を買われ、監視付きではあるが、一軍を任されるまでになったのだ。
(俺も力を手に入れなくてはならない。だが「組織」の手を借りずにだ！)
「マギ」は外にもいる。敵だらけのこの国を出なくてはならない。俺が紅徳から帝位を奪う時、その正統性を認め力を貸してくれる者がいるとすれば、国外に求めるしかないんだ！
俺は何年もの間、紅徳に従順な、学問にしか興味のない第四皇子であり続けた。
そしてこの厄介者を、紅徳はついに国外へ遊学させる気になったのだ。いくつかの土地を経た後に……
ついに、俺はシンドリア王国へ向かうことになる。
「七つの金属器」を持つシンドバッド王、そして「マギ」たるアラジン殿のいる国へだ。
しかし＿
『白龍を幸せにしてみせる！』
『あなたを愛しているんだ！』
『辞めてよ……』
『さようなら。』
「……」
(やはり助力を求めてはならなかったのだ。いや…誰かに力を借りるとしても……
理解されようと求めてはならなかったのだ。今、煌帝国の民すらも今いる皇帝や紅炎が倒され、内乱が起きることを望む者などいないのだから。
それに、やはり俺は”愛”なども求めてはいけなかったのだ。たった一言、たった一度の機会で惚れてこの人なら自分を救ってくれるかもと希望を見いだした俺が馬鹿だった。これも、理解されようと求めることは不要だった。
彼女は煌帝国の記憶はもう「とうの昔」のことになってしまっている。直接俺のように家族を殺された訳でもない。確かに生き方を縛られさぞかし辛かったろうが、俺のような恨みや怒りは芽生えないだろう。俺の気持ちを理解できなくて当たり前だ。
それでも…俺はやらねばならない。
なぜなら、このまま「組織」に操られたら、この国がどうなるか知っているからだ。父や兄のように使うだけ使われて、邪魔になれば消されるだろう。
「ザガン」で見せられたムスタシム王国の内乱の光景…「組織」の目的はなんだ？世界の戦乱と悲劇、そのものが目的なのだとしたら……
より1層、あの女を生かしては置けないな。)
『それは私怨じゃないって言えるのか!?白龍!!』
「………………」
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作者名：氷空音 | 作成日時：2022年5月5日 23時
