理想郷.25［マギ］ (ページ18)

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「…………いいやソロモン、俺はいつもただ考えるだけだよ。俺の夢みたいな理論は君ほどの魔導士じゃないと実証できない。だから俺はいつも誰かからもバカにされてた。それを君が拾い上げてどんどん現実にしてくれるんだ。

ワクワクするよ。だから俺は君のことが大好きなんだ！」

「光栄だね。」

そいそいそいっと、飛び回りながら出会う戦艦を遠くへ飛ばすグロリア。
ソロモンたちより少し離れた場所に来たグロリアに、セイバーは追いついた。

「姫…」

グロリアは返事をすることも無く無表情で戦艦を消していく。

▼▼▼

「なんで…こんなことができるんだ？君は。」

グロリアは辺りの戦艦が全部なくなったのを確認して、振り返らないまま杖を片手で握って空中に立っていた。
その太陽光に反射し、キラキラと輝く長い白髪が、風で横に靡いた。

「姫は…相手を攻撃するような物理魔法は苦手だと言ってたけど……それは何故なの？」

彼女は答えない。

「でも、嘘をついているようにはみえない。魔法は得意ではないの？」

「私は自分を守る魔法しか使えないのよ。」

彼女は振り返らない。

「それは何故？」

「……この世の神が、そう仰ったから。」

▲▲▲

彼女は振り返った。
長い髪が顔にかかっているが、それも気にしていない。

(そうだ、まだ無知で馬鹿だった俺は、全く同じ状況下で前に1度聞いたことがあったんだ。その拭えない違和感が、どうしても放っておけなくて。)

「……本当は、ソロモンよりも、強いんだろう？」

セイバーは、長い前髪が風で横に別れて、いつもは見えないその目で彼女を見つめた。

彼女は真っ赤な瞳で彼を見つめ返した。

そのはずなのに、その瞳は彼を捉えていないような気がした。

「世界の均衡を、崩すべきではないのよ。」

息を飲んでしまうような美しくも目が笑っていない笑みを浮かべたグロリアは、杖をブンッと横に振った。

セイバーは気がついたら、ウーゴらの元へ戻ってきていた。

「わあ、驚いた。転送されてきたの？」

「……お前は…知っているのか？」

「え？」

「姫様の秘密を。」

セイバーの髪から覗く真っ直ぐな瞳を見て、ウーゴは小さく悲しそうな笑を零した。

「君も知らないなら、知るわけがないだろ？」