過去.６［マギ］ (ページ45)

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第44夜　黒い太陽ページ45

「おお、戻ったか「銀行屋」。」

「ハイ、アブマド国王様。」

銀行屋と呼ばれる布で顔を隠した一人の男は、躊躇することなく国王の居る台の前の階段の前までやってきた。
がしっ

シンは隣で震えているAに気が付く。
俯いていて顔が見えなかったが、シンは平気か、と声をかけた。気分でも悪くなったのかと思ったからだ。
だが…

がしっ

「！？」

彼女は突然、シンの腕を掴んだ。
その手は震えていた。
そしてそのまま顔を上げぬままササッとシンの後ろに隠れた。
シンは可笑しいとは気が付きながらも、彼にばれぬよう振り返らないまま前を見た。

「バルバッドは相変わらず蒸しますね。参ってしまいますよ。」

銀行屋は布をパタパタと仰ぎながら言った。

「…おや？先客が？」

「…ッ、」

Aはシンの後ろで立ったままギュッと身を小さくした。

「そちらは、来訪中のシンドリア国王殿だ。挨拶せい銀行屋。」

アブマドがそう教えると、銀行屋は「ハイ。」と返事し、ぐいっと顔の布をめくって、ニコッと笑った。
その胡散臭い顔で。

「初めまして！シンドリア国王様！私、「銀行屋」のマルッキオと申します！
現在、仕事でバルバッドの財政の顧問を請け負っております。どうぞお見知りおきを！」

「初めまして、シンドリア国王シンドバッドです。よろしく！」

二人は握手を交わした。

「ええ、ええ、こちらこそ！伝説に聞く、攻略王シンドバッド様にお目にかかれて光栄です！」

「いや、そんな大げさですよ。」

そこまで会話したところで、シンはマルッキオを見つめ既視感を覚えた。

「…？あなたに…どこかでお会いしたことが？」

「いいえ、私とあなたは初対面ですよ！」

気のせいだろうか、とシンは「そうですか…」と返した。

すると、後ろがザワザワとしだす。

突然入ってきた男がいるようだ。

「あー、もうどけって！なんなんだよ、今日のうぜぇ人込みはよー＿…」

「！」

シンは振り返り、まだ状況が理解できていないというのに咄嗟にAの腕を掴み背中へ隠した。
つまり、マルッキオのほうに持ってきた。Aは瞬時にシンの背中に顔をつっこんでマルッキオに背を向けた。
彼なりの気遣いと言うことはわかるが…

「おや？貴方様は…」

「ッ…」

「あっ！？」

マルッキオのつぶやきをかき消す声。

(！？ジュダル！？)

シンはギクッと驚いた。

そう、彼はジュダル。煌帝国のマギだ。