第42夜 アリババとシンドバッド ページ35
(なんでこんなことに…「シンドバッド」！？伝説の「迷宮攻略者」じゃねーか！)
アリババは歯を食いしばりながら、まだ剣を出せないままシンを睨んだ。
「待ってくださいアリババさんは…」
止めようとしたモルジアナの前に、スッと手が現れ遮られる。
それはAだった。
モルジアナは困惑しながら、アラジンをバッと見る。
だがアラジンも、何も言わないままアリババをただジッと見つめていた。
パチッ
振り返ったシンとアラジンの目が合う。
(！？アラジンもAさんもなぜ動かないの！？アリババさんが危ないのに…)
「今がきっと、「正す時」なんだよ。」
納得いっていないモルジアナに言ったのはAだった。
モルジアナはAの後姿を見つめる。
「まぁ、少しは反省してもらわなくちゃ。」
＿私も許してないからね。
Aは眉を下げて優しい笑みを浮かべていた。
呆れたような、けどしょうがないなあって顔。
モルジアナは本当の友達にしかわからない感情なのかなあと不思議に思った。
「アリババ逃げろ！！逃げてくれ！！」
マスルールに腕を掴まれ捕まったカシムはそう声を上げた。
「おい、野郎ども！俺たちの頭領を逃がすんだ！！」
「ほお、大将を逃がすか。それも一つの判断だ。どうする？アリババ君。一旦逃げるか。
だがどうせ「霧の団」は終わりだ。実権はそこの男が握っていたんだろう！？」
シンの剣の先で指されたのはカシムだった。
カシムは悔しそうに眉を顰め目を吊り上げた。
「まあいい、アリババ君。逃げたければ逃げればいいさ。考えてみれば、君はこいつらとは「違う人間」だものな。」
(・・・・？…何言い出すんだよこいつ…)
アリババはポカンと口を開けたままシンの言葉を聞いた。
「彼らは「スラム街の人間」。君は、表面上は仲間のふりをしていても、実はそうじゃないだろう？君と彼らは違う…」
＿やめと…言うな、言うんじゃねぇ！
「だって君は、王子様だ…」
「黙れ！！！！」
アリババは声を荒げた。
「知った風な口きくんじゃねぇ！！俺とこいつらに何一つ違いなんてねぇ！！
こいつらみんな、俺の大切な故郷の兄弟たちだよ！！それを…それを…
その絆を、バカにすんじゃねぇえええ！！！！」
やっぱり、君は。
「礼節と厳格の聖霊よ、汝と汝の眷属に命ず。我が魔力を糧として、我が意志に大いなる力を与えよ。」
彼が唱える時も、
シンも、アラジンも、Aも、
ただ無表情で、見つめていた
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作者名：氷空音 | 作成日時：2021年4月2日 16時
