過去.６［マギ］ (ページ4)

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「なあカシム、お前どういうつもりだよ。」

基地の通路を、カシムとアリババは並んで歩いた。

「…どうって？」カシムは薄ら笑いを浮かべたまま表情を変えず聞き返した。

「ああいう得体の知れねー奴ら、どんどん引き込んで！団の人数はここ一か月で倍になってる。お前、戦争でもする気かよ！？」

「……戦争か…いいね。」

「おいっ！」

「冗談冗談！だが、俺たちは戦い続けなきゃなんねぇ。この国は終わってるからな…
経済は破綻し、他国に介入され、何もしねぇ官吏や貴族たちがのうのうと飯を食ってやがる。
奴らをこらしめるには仲間が必要なんだよ。お前もリーダーならそれを早く自覚しろ！！」

「それはお前が…！」

「アリババにいちゃーんっ！」

アリババがカシムに言い返そうとしたとき、高くて楽しそうな子供の声が彼の名を呼んだ。
振り返ると同時に、アリババの腰に子供たちが抱き着く。その表情は笑みで溢れていた。

「にいちゃんおかえりーっ。今日も国軍をやっつけたんだろ！？」
「スッゲーアリババ兄ちゃん！」

国を守るはずの国軍が子供でも「やっつけるべき」対象と言う認識になっていることが、何よりもこの国の状況を表していた。

「兄ちゃんの連勝のおかげでスラムのみんなは一日２回も飯を食えるようになったんだよ！アリババ兄ちゃんはスラムのヒーローだよ！！」

そうだそうだと笑う子供たちに、アリババはうっ、と声を詰まらせた。

「なあ、相棒。」カシムの手がポンとアリババの肩に乗る。

「俺たちもこのぐらいのガキの頃…スラムの地獄を一緒に生き抜いてきたよな…」

カシムの手は片方の肩だけではなく、アリババの両肩に乗り、カシムとアリババは向き合う形になる。

「スラムはこのままじゃだめなんだ。そしてお前は、この地獄から抜け出したことのある唯一の人間だ。お前にしかスラムを変えられないんだ！
頼む、あの子供たちを救ってくれ…俺の妹みたいにしないでくれ…！
もう、どこへも行かないでくれアリババ…！俺の傍で…昔みたいに一緒に戦ってくれ！！」

いつも笑みを浮かべているカシムの表情に苦痛が宿った時、その必死な表情にアリババは首を横に振ることも、縦に振ることもできなかった。

無言は肯定。

それはアリババが嫌程わかっていたが、自分は否定することもできなかった。

”責任感”が彼を縛った。