朝と君と待雪の花 04 ページ33
午後になって、マスターの風邪は回復の兆しを見せた。まだこほこほと咳き込むが、一人で食べるのは味気ないからと食堂へやってきた。
「マスター!」
「おかーさん!」
飛びつくナーサリーとジャックをしっかり抱きとめる。
わらわらとそのほかのサーヴァント達も姿を現し、静かだった食堂が活気づいた。その様子を眺めていたエミヤはふむ、と頷く。
「これはメニューを変更だな」
下処理を終えた肉をストックにまわし、風邪のマスターでも美味しく食べられるーーーー鍋焼きうどんを作ることにした。
鍋焼き、といってもひとり分を小鍋に用意することは人数の関係から難しい。スタッフも含めると100近い大所帯だ。準備を整え、不備がないかのチェックする。
今日はエミヤひとりではない。カルデアで料理に目覚めたブーティカに、おおよそを器用にそつなくこなすロビン、そして、前掛けを腰に巻いて気合い十分のA。頼もしい助っ人がいる。
メニューの変更を伝えても、マスターを思ってそれがいいだろうと快諾してくれた。
必要な食材をざっと見繕い、各々包丁を手にまな板の前に立つ。
「おおまかな流れだが、まずは全員で食材を切る。野菜と昆布から出汁を取るから、出汁分の野菜が揃えば私は出汁にとりかかる」
「じゃあ私は頃合を見て麺だね」
「俺は食材の処理の続行だな。なーんせ量が量だし」
「ああ、ふたりはそれで頼む。……A」
エミヤは自分はどうしたらいいか一生懸命考えている少女に、大事な役目を任せることにしていた。
「君はまだ二人ほど包丁の扱いに慣れていないが、卵料理ならどうだね?」
はっとしたAの目が、決意の光を宿す。
「玉子焼き100個、任せられるか?」
「はい!」
力強い返事に、エミヤはふ、と微笑んだ。
「100ぅ? そりゃあ大仕事だ。うまいやつをひとつ、頼みますよ」
「何かあったら手伝うからね、遠慮なく言うんだよ」
ブーティカとロビンにも声をかけられ、Aは嬉しくなってはにかむ。
(かわいい……)
幼子の存在は場の空気を和ませた。
「目標は1時間後だ。やるぞ」
サーヴァント達も、ただ待っている者はひとりもいない。ランチョンマットや、文化圏によって異なるカトラリーを並べ、料理がいつ来てもいいように準備する。
「先輩、今日は鍋焼きうどんだそうです」
「や゛っだぁ」
喉がやられてひどい声だが、マスターは箸を手に大喜びした。エミヤの料理はどれも優しい味で美味しい。
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Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 碧依さん» わわわわ感想ありがとうございます!!2度もいただいてもったいない……!は、発狂!そこまで萌えていただけて嬉しいです!いつも応援ありがとうございます、3部頑張ります! (2018年1月11日 0時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - ありささん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章から読んでいただけて嬉しいです!3章楽しみにしていただけている気持ちに答えられるよう頑張ります、応援ありがとうございます……! (2018年1月10日 16時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
碧依(プロフ) - 第2部完結おめでとうございます!最後の方は超絶キュンキュンして悶えながら読んでました← もう心の中で発狂してました← 第3部も続くとのことで、とても嬉しいです! 心待ちにしています! これからも頑張って下さい! (2018年1月10日 14時) (レス) id: e83e0a514a (このIDを非表示/違反報告)
ありさ(プロフ) - はじめまして、一章から楽しく読ませていただいております!三章が凄く楽しみです!これからも頑張ってください!! (2018年1月10日 13時) (レス) id: 5124bcd214 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - いよりさん» はじめまして!感想ありがとうございます!1章かは2章まで読んでいただけて嬉しいですありがとうございます……!3章もハラハラドキドキ、きゅんきゅん多めな展開を目指して頑張りますので、よろしくお願いします! (2018年1月9日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年12月13日 23時