きよしこの夜 【4】 ページ15
ぎゃあぎゃあと騒ぎながらも師の背を追ってたどり着いたのは、キャスタークラスの英霊達が集う部屋の一角だった。
カルデアは広大で、英霊ひとりひとりになると難しいものの、クラスごとや縁の深い者同士を組ませて部屋を与えられるだけの敷地を誇る。英霊たちも霊体化する者、人間のように過ごす者と実に様々だ。
少女も自室は持っているが、そこは年頃の女の子。マシュや仲の良いサーヴァントの部屋を行き来して、パジャマパーティーを楽しんでいる。
だが、キャスタークラスのサーヴァントの部屋には近寄ろうと思ったことすらなかった。なんとなくどうしてか足が遠のくと漏らせば「魔術によるもんだ」とキャスターはにんまり笑う。
「お、お邪魔します」
2人は忍び足で暗闇の中へ踏み込んでーーーー目を輝かせた。
「わぁ······!」
まるで、夢のような場所だった。
本が本棚に収まらずに宙をふよふよと漂う。
青い炎を纏ったトカゲが蜉蝣のような羽を震わせる。
極めつけは、しゃらしゃらと美しい音をたてる水晶や七色の原石。壁からせり出る様子は、ここを洞窟だと錯覚しそうだ。
「俺だけの工房、という訳でもないんだがな。ま、事がコトだ、許してくれるだろうさ」
さて。
そんなひと言のあと、フードを豪快に脱ぎ捨てた。
「わっぷ!」
顔にぽふんとぶつかったそれを、マシュが慌てて掴む。「ナイスキャッチだ、お嬢ちゃん」と軽くからかってから、キャスターはマスターたる少女と向き合う。
「これからオルタの霊基を辿る」
「じゃあオルタは、消えてないんだね!」
「ああ。これは俺の勘なんだが······オルタは途方もなくでかい力に引っ張られたんだと思う。敗北の際に器が不安定になったのもまずかったな」
「生きてるんだね、オルタ」
「ああ。同じ名の英霊である俺にはわかるさ。消失したとなりゃあ、なんか感じるもんもあるってことよ」
師の力強い言葉に、少女はじわりと目に涙を浮かべる。
しかし歓喜には早いことを、険しい顔が教えていた。
「方法なんだが······生憎とこれが一つしかねぇ。しかも博打みたいなもんだ」
「わたし、やるよ。師匠」
「お前ならそう言うだろうと思った」
少女の決意を受けて、キャスターは杖を構える。
「お前の願い、この俺が引き受けた······!」
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皐摩(プロフ) - もう…!!好き過ぎる…!最高すぎる作品ですうううう!!!! (2019年2月28日 3時) (レス) id: 8434b91720 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 火星さん» 感想とお祝いありがとうございます!このままBADエンドでもいいんじゃないかと途中で悪魔が囁いてきましたが、たぶん狂王の宝具で木っ端微塵にされたんだと思います(笑)続編の方も頑張ります、応援ありがとうございます! (2017年12月28日 21時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
火星 - 完結おめでとうございます。途中から主人公が消失するのかと思ってヒヤヒヤしていましたが、最後は狂王と主人公がちゃんと幸せそうでよかったです。続編でも頑張ってください、応援しています! (2017年12月27日 10時) (レス) id: 9638a5e671 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 川瀬さん» ありがとうございます!実は川瀬さんの作品、私も陰ながらこっそり読ませていただいています。今は無き理想郷のランスロットと主人公ちゃんのやり取りが微笑ましくて何回も見てます。続編では幼女とイチャイチャ()を考えていますのでよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 23時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
Sandoriyon0000(さんどりおん)(プロフ) - 鏡花・オルタさん» ありがとうございます!コンセプトが最後は絶対ハッピーエンド!(漠然)だったので、この結末に落ち着けたことに自分でもホッとしています。続編では優しいオルタと優しい世界を目指します。またよければよろしくお願いします! (2017年12月13日 22時) (レス) id: 1352ea05b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Sandoriyon0000 | 作成日時:2017年10月21日 3時