Sanatorium. 2【文豪ストレイドッグス】

88#I'm bored. ページ43

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帰ってから治さんに怒られた。
「ちゃんと電話に出なさい」って。
夜鳥は云ってもないのに何だか察してたけれど。


それから組合(ギルド)に警戒を続けながら、緊迫した日々が続いた。




「A、ちゃん」


『ん?』


「この前の、事なんだけど……大丈夫だった?」


『……何が?』




矢っ張り勘付くか。
鏡花は知っているところを沈黙を守り続けているけれど、流石にお父様を目の前にした時は酷く怯えていた。




「あの知り合いのお医者さんと、何かあったんじゃないのかなって……。あ! 云いたくない事だったらごめん!!」


『……あったは、あった。けど、敦さんは未だ知らなくていい。知らない方が、きっと幸せでいられるから』


「え? それって、どういう……?」




やめて。
それ以上私に踏み入らないで、お願いだから。




『云いたくない事だから、御免なさい』


「そ、そうだよね。ごめん、僕こそ出しゃばっちゃって」


『ううん……心配してくれて有難う。嬉しい』




彼はお人好しだ。
三十五人殺しの鏡花を引き入れるし、懸賞首にされているのに同じ私も心配するし。




『ほんと……莫迦なのか、何なのか』




ボソリと呟いていた机に突っ伏していると、横から夜鳥が抱き付いて来た。




「お父様に会った事、太宰さんに云わないの」


『云わなくていいよ。そのうち勝手に知れる』


「……戻って来いって云われただけで、素直に此処に返してくれるなんて変な人」


『あの人は昔からそうでしょう? おかしな人よ。森鷗外という人間は……』




「まぁ、確かに」と云って笑う夜鳥。
そういえばと思って辺りを見回すと、さっきまで居た敦さんと鏡花がいなかった。

「敦さんと鏡花は?」と聞けば、「お使い」と返ってきた。




『私も仕事欲しい。手持ち無沙汰』


「歩く懸賞金は行動を控えろって」


『誰が』


「太宰さんと国木田さん」




はぁ? と云いたくなる案件だ。
誰が“歩く懸賞金”だ。
懸賞首なのは昔からだし、今更感すごいのに。




『敦さんも歩く懸賞金』


「Aは三百億。中島さんの約四倍の額だからね?」


『そんじょそこらの異能者に負ける程弱くない』


「太宰さんが危惧してるのは形態転換が起こる事。俺もAを危険には晒したくない」




私を護る為の最善、という訳ね。
「分かったよ」と云って頷いて私は黙った。




(おい、双子! 出るぞ)
(仕事!)

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