85#震えるか細い声音 ページ40
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社長会議に出席を促され、席についたのはいいが、何も私は便利屋さんでは無い。
慥かに期待に応えられるものがあれば喜んで差し出すが、生憎今の私に動かす事の出来る手札は一枚もない。
『追跡が宛てにならない今、私はお手上げです』
「同じく」
夜鳥も両手を上げて首を横に振る。
すると治さんはそれに同調して頷くと、思い付いたように私に笑いかけた。
「だよね。そうだ、Aちゃん」
『ん?』
「矢っ張り敦君達心配だから追い掛けて呉れない? その方がいいですよね、社長?」
「嗚呼。A、頼めるか」
『畏まりました。夜鳥____』
椅子から腰を上げ、出る準備をしようと夜鳥を呼び掛けたところで治さんは言葉を遮った。
「念の為、異能発動保って夜鳥君残して貰っても?」
『あぁ、それなら。夜鳥、此処お願いね』
「うん、分かった。Aも気を付けて」
そうして、私は一人で探偵社を飛び出して敦さん達の後を手帳を見ながら追っていたのだが、途端にその反応が賢治さんのように定まらなくなった。
先刻まで反応があったのは交差点。
消えたところで待っていれば何かあるかもしれない。そう思い、建物の影でしばらくの間待った。
「Aじゃない!」
『エリス?』
「会いたかったわ。夜鳥にはこの前会ったのだけれど」
『うん……。久し振りに会えて私も嬉しい』
私の前に現れたのはエリス。
相変わらず可愛くて、近かった目線も随分と離れた。
『お父様、は……?』
「ちょっと泣かせたくなったの」
『ふふっ、そっか』
「夜鳥は今日は居ないの?」
『別行動してる』
「あら、残念ね」
その時、交差点がワッと騒がしくなった。
其処には敦さん、潤一郎さん、ナオミさんが居た。離れたところには涙目の
そして____
「大丈夫だったかい。何処に行っていたのだい。心配したのだよう。突然居なくなるから」
「急に消えたらリンタロウが心配すると思って」
「そうだよ。心配したよう。泣くかと思ったよう」
「そしたら泣かせたくなった」
「非道いよエリスちゃん! でも可愛いから許す!」
エリスにデレデレなお父様。
エリスはポツリと言葉を漏らすと彼の顔が変わった。
「Aにも久々に会えたから」
「何だって?」
蚊帳の外だった私の方にお父様の顔が向くと途端に不気味なほどの笑みが浮かんだ。
(Aちゃん)
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綺弌(プロフ) - 秋野楓さん» コメント有難う御座います。双子ちゃん人気で嬉しいです! 夢主ちゃんと誕生日が同じとは……! Sanatorium.は現在パート4まで、また番外編の受け付けもしています。これからも頑張って行きますね〜 (2018年11月27日 0時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
秋野楓(プロフ) - 初コメ失礼します!夢主ちゃんと片割れくんのコンビ素敵ですね!実は夢主ちゃんと同じ誕生日でびっくりしてコメントしてしまいました…笑これからもがんばってくださいね! (2018年11月27日 0時) (レス) id: 0550af0881 (このIDを非表示/違反報告)
綺弌(プロフ) - Ratte*らてさん» コメント有難う御座います。キャラ誉めて頂けて嬉しいです! 日々、ゆっくりと頑張っていきます。 (2018年11月1日 22時) (レス) id: 8d4a337e5e (このIDを非表示/違反報告)
Ratte*らて(プロフ) - いやー…夢主ちゃんも片割れくんも可愛いですねぇ…、癒しです。更新応援してます頑張って下さい!! (2018年11月1日 21時) (レス) id: 112e01abc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:綺弌 | 作成日時:2018年10月26日 3時