Sanatorium. 2【文豪ストレイドッグス】

65#生まれ出づる神々 ページ20

-


後日、武装探偵社では依頼に向かおうとするAと夜鳥の姿があった。




「お前達の持つ異能は覚えきれていないが、太宰に云われた通りに動くんだぞ。いいな?」


『はい、独歩さん!』


「早く覚えて下さいよ。太宰さんの計画鬼畜なんで」


「えぇ〜、非道い云いようじゃないか」


「ま、Aが良いって云うので俺も従いますけど」




調査資料、写真機(カメラ)、注射器一式(セット)入りの鞄。護身用の拳銃と手術刀(メス)の入った太腿の武器鞘(ホルスター)。

二人はヒラヒラと手を振って探偵社を飛び出した。


残された社員達は窓から双子を目で追う。
仲良さそうに二人で手を繋いで歩いて行った。




「ああやってるのを見ると可愛らしいねェ」


「まだ十六歳ですから」


「もう(・・)十六歳だよ。夜鳥君の腹黒さに磨きが掛かってる」


「……」




太宰は何も云わず、ただ目を細めた。

今、双子の手綱は自分の手にあるが、何時それが途中で夜鳥に食い千切られるか。分かったものではなかった。




「与謝野女医(せんせい)。歌姫と魔弾って生きてるんです?」


「大戦後から行方不明らしいンだよ」


「へぇ……」


「太宰はまだその事調べてたんだ?」


「一寸気になって」




福沢なら知っているだろう。
しかし、きっと答えてはくれない。
若し、どちらかが姿を現してくれれば……。




「あ」


「何だ」


「Aちゃんと銀髪の女性……似てるかも?」


「はぁ?」




半暴走状態に置かれていた銀白色のA。
街中でフワリと消えてしまった銀髪の女性。




「……流石に考えすぎなンじゃないかい?」


「そうだったら、いいのだけれど」




一方、ポートマフィアでは水面下で調査が進んでおり、鷗外の手元には三人分の情報があった。

人工異能No.Z-035【パンドラの匣】保有者、躑躅ヶ咲Aこと、森A。
音子使いの異能力者・歌姫こと、アリア=ラ・ジャック・ヴィセル・ペトリーシェヴァ。
異能力不明の異能力者・魔弾こと、躑躅森(つつじもり)憂吏(ゆうり)。




「二人の内、片方だけでも接触(コンタクト)が取れればねぇ」


「リンタロウ。この人、Aに似てるわね」


「……あぁ、迚も興味深いよ」




机に置いた写真立てを手に取り、鷗外はうっとりとする。
写っているのは幼少のAと夜鳥だった。




(リンタロウ気持ち悪い)
(非道いよエリスちゃん!)

66#風に洗われて眠る→←64#当然の反撃

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す