Prolog ページ1
《You》
籠の中のヘドウィグが先程からバタバタと暴れている。
「出してあげられないよヘドウィグ。」
ハリーが困ったように言った。
新学期までの休暇、ハリーは階段下から部屋を移動して私もといダドリーの2つ目の部屋に越してきた。
ペチュニアおばさん曰く、今まであんたを娘のように可愛がってきたけど、ハリーのことをコソコソ庇っていた上、同類の魔法族だと知ってしまったなら話は別だ、と。
その言葉通り、ハリーと私の扱いは同等となった。
これでハリーを助けることは出来なくなった。
再びヘドウィグが鳴きながら暴れた。
「学校の外で魔法を使っちゃいけないんだ。それにバーノンおじさんが…。」
ハリーが部屋のドアを見ると、案の定バーノンおじさんの怒声が聞こえてきた。
「ハリー・ポッター！」
「ほらやっぱりきた。」
ハリーはうんざりしたように階段を降りていった。
一方ヴァイツェンは大人しく部屋をキョロキョロしている。
私はハリーが気になって階段を降りて居間の様子を伺った。
どうやらバーノンおじさんは女の子である私には強く当たれないみたいで、いつもハリーに矛先が向いてしまう。
まもなくして居間からでてきたハリーは私に耳打ちした。
「今日は商談があるから、居ないふりをしていろって。」
それくらい楽勝だよ、と私は胸を張った。
一緒にチェスでもしようと誘うと、ハリーは嬉しそうに頷いた。
ーー
「アハハハ！ナハハハ！ウホホホ！ナハ…。」
ハリーと部屋に戻ると、何かがぴょんぴょんと跳ねていた。
そして私たちに気づくと、それは急に大人しくなり、うやうやしくお辞儀をした。
「ハリー・ポッター！A・シルヴァー！何たる光栄でございましょう。」
「えっと……誰？」
私が尋ねると、「ドビーでございます屋敷しもべのドビーです。」
と答えた。
「そう、ドビーね」
「でも今僕らの部屋に屋敷しもべがいると都合が悪いんだ」
ハリーが諭すように言った。
「おお…そりゃもう分かっております。ただドビーめは申し上げたいことが…。」
ハリーのベッドの上をウロウロして、手をモジモジとさせている。
「とりあえず……座ったら？」
ハリーが促すと、
「す…座って…すす…座って？おおお…！」
ドビーが急においおいと泣き出してしまった。
「ああっ、ちょっ、シーッ」
慌てて私が静かにするように合図した。
この屋敷下僕の訪れが、新しい扉が開かれる合図だったとは知らずに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 157人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そぼく | 作成日時：2023年3月27日 2時
