異端者は彼の正体に気づいたようです【名探偵コナン】

佰伍拾肆 ページ14

A side


_____夢を見た

_____とてもあたたかな夢






「やあ、久しぶりだね。」

目の前の男がにっこりと笑ってそう言う。

『あぁ、そうだな。』

だから俺も、笑って返した。

「とても楽しそうで何よりだ。あの時君をこっちにやって正解だったよ。」

『楽しそうか？』

「あぁ、とってもね。」

カラカラと笑う。



「大切な人が出来たんだろ？」

目を細め、優しい目差しで俺を見る。


_____あぁ、俺はこの瞳を……

_____この優しい瞳を知っている……



『……あぁ、この世界に来て良かったよ。ありがとう、冥府の官吏。』



_____否、この人は……



『_____嵯峨さん』

「ありゃ、わかってたの？」


肩をすくめる嵯峨さんは本当に何も変わっていない。





『……嵯峨さん、御免なさい。俺、ずっと謝りたかった。嵯峨さんは俺のせいで死んだ。俺なんかを庇って……』


「お前のせいじゃないさ。」


彼の左手が俺の頬に触れた。
それは、頬を伝うものを優しく拭うかのように。



「”俺なんか”なんて言うな。自分を卑下するな。俺は、お前だから守りたいと思ったんだ。」

『_____っ!!』

「だから、謝ってくれるなよ。」

『……うん。』


俺が頷くと、彼はニッコリと笑いポンポンと頭をなでた。



『…ありがとう』

「どういたしまして。さて、そろそろ時間だ。」

一歩足を惹いておれと距離をとる。

『…もう会えないのか？』


彼の背中にそう問いかける。



「う〜ん…本当に必要なら会いにいくさ。」


”でも……”そう言って振り返った彼の


「お前には、もう大切な人がいるだろう？


　_____俺の最後の望みを叶えてくれてありがとうな、A。」




その儚げに微笑んだ彼の表情を俺は、二度と忘れることはないだろう。



それは、嵯峨さんが腕の中で冷たくなっていくあの時と同じだったから。

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