. ページ8
.
「もー……絶対外でガチ寝しないでよ？」
「それは大丈夫。乾の家だからガチ寝してただけなので」
「あそー」
「……照れてる？」
「っるっさい」
通販サイトを開いて、検索するのはキーケースと日傘。
……それと危機感の薄い彼女のために、なにか防犯グッズも見繕ってやった方がいいかもしれない。
「『いかのおすし 標語入りＡ４下敷き』だって。あ、いいじゃん。これ大学の講義で使いなよ」
「何？ 急に何の話？」
冗談でそんな検索をかけていれば、身体を起こした彼女はクッションを抱えて俺の隣に座る。
「ん」
「え、何？」
「いいから、ココ座んなよ」
そこじゃないだろ、と。
身体をずらして俺の前に座るよう促せば「暑いじゃん」といいつつも彼女は腕の中に収まった。
……うん、たしかに暑い。
「照れてたくせにくっつきたいんだねぇ」
「あーもうマジでうるさい。
「え……なんか……そういうのが好きなの？」
「違うわ」
ああいえばこういう。
顔を合わせるたびに言い合いをしている俺らは、周りからすれば犬猿の仲に見えるのかもしれない。
それでも俺が彼女と付き合っているのは、今までで一番、俺のリードを引くのが上手いと思ったから。
俺のやりたい事、行きたい所を決して邪魔せず、寄り添い、間違った事はきちんと叱ってくれる。
……これは犬に例えていってるだけであって、リードを引くとか、そう意味じゃないからね。
なんて今言っても、揚げ足を取ってくるだろうから絶対言わないけど。
犬は賢くて強い生き物だ。
主人が誤ったことをすれば、時として牙を剥くかもしれない。
だからもしAが、その肌を無防備に晒して、ほかの男に触らせるような事があったりしたら。
至る所に歯を立てて、真夏でも肌を出して歩けない程、噛んじゃうかもね？
戯れに、眼下にある耳朶へやわく歯を立てる。
漏れた吐息とおやつよりも甘美な声に、内側からも獣のような熱で侵されていくのを感じた。
⿴⿻⿸
正しい躾と
マズルガードを
──手懐けて、恋情。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 253人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：じばくスイッチ | 作成日時：2022年8月6日 21時
