八話 ページ9
〜貴方side〜
重たい瞼をゆっくりと開ける。
部屋に差し込む太陽の光に目を細めながら、僕は見覚えのない部屋を見渡した。
ここは････
「起きたか。Aよ」
「貴方は････」
青い着物を着た美しい男が、縁側で茶をすすりながら僕に声をかけてくる。
確かあの人、 こんのすけさんが長い名前で呼んでた気がするが、どうにも思い出せず首を捻る。
すると、
「俺の名は三日月宗近。まあ、天下五剣の一つにして、一番美しいともいうな。 十一世紀の末に生まれた。ようするにまぁ、じじいさ。ははは。随分と大きくなったな、Aや。俺の事を覚えているか？」
「は？」
「昔のように宗近兄ちゃんと呼んでくれて良いぞ。 俺もその方が嬉しい」
そう言って笑っている男を見て、僕の思考は一時的に止まる。
この人は何を言ってるんだ。
宗近兄ちゃんって････
確かにこの人に似てはいるけれど、和服何て着てなかったし、ましてや、刀剣男士何て訳の分からない人種じゃなかった。
「何を言っているのか分かりません」
「俺の事を忘れた訳では無いだろう？ 先程から、ずっと呼んでおったのだから。なぁ、Aよ」
「知らない」
小さく溜息を着いた三日月宗近は、湯呑みを置いて僕の方へと近づいてくる。
僕は布団を持ったまま、後ろへとずるずると逃げるが、勿論逃げ場など直ぐになくなる。
「A･･･」
「触るな！」
伸ばされた手を払い除け、目の前の男を睨みつける。
「俺のことが嫌いか？」
嫌いか････だと？
そんなの、決まってる。
「仮にアンタが宗近兄ちゃんなら、答えはYesだ。 アンタなんて大っ嫌いだ！」
「A････」
「あれだけ傍に居て、僕に優しくしといて、忽然と姿を消して、僕を捨てた！！ 約束したのに！ 」
「･････。」
何も言わない三日月宗近。
僕は、持っていた布団に包まり、彼の視線から逃げた。
色々なことが起こりすぎて、流石に疲れた。
笑ってることも忘れるほど、混乱しているし、
考えることすらしたくない。
心のどこかで分かってるんだ。
彼が、宗近兄ちゃんであるということを。
「A、すまなかった」
そっと布団越しに触れられ、か細い声が僕の耳に届いた。
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