五話 ページ6
僕が中学3年に上がった時、彼は突然姿を見せなくなった。
何も言わず、
ただ忽然と。
最初は忙しくて来れなくなっただけかと思った。
この10年、彼が僕に会いに来なかった事なんてなかったから。
毎週
毎週その公園に行っては、彼を待った。
雨の日も、
蒸し暑い日も、
猛暑日も、
雪の日だって、
関係なく、僕は毎週金曜日。
彼に会いに、その公園を訪れた。
けれど、姿を見せなくなった日から、彼が僕に会いに来てくれる事は一度も無かった。
まただ。
また捨てられた。
僕の何がいけなかった？
彼の優しさに甘えすぎたから？
気が利かなかったから？
生意気言ったから？
僕が"完璧"じゃないから？
駄目な所があるなら言ってくれ。
ちゃんと直して、期待に応えてみせるから。
だから、
だから、どうか。
何も言わずに離れて行かないで。
『家族とな。俺とAがか？』
『そ、そう！』
『ふむ。 それは良き案よの。はっはっは』
「良き案だって、言ってくれたじゃないか･･･!!」
僕を一人にしないで。
高校に上がると同時に、僕は全寮制の学校に進学し、親戚の家を出て、あの公園にも立ち寄ることは無くなった。
それからすぐ、僕は学校へ行く道中に交通事故に巻き込まれて数ヶ月意識不明になる。
そして、次、目を覚ました時には。
僕の記憶から
"宗近兄ちゃん"という存在は、消えていた。
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