【世界一初恋】貴方の瞳に映らなくても【男主】 (ページ9)

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9話ページ9

「お前、何してんの」

珈琲片手に声をかけると、目を丸くした西岡が小さく「イケメン」と呟いた。

「はぁ？」

「？！いえ、お疲れ様です！！」

立ち上がった西岡は顔を赤らめ勢いよく頭を下げる。

コイツ本当に変わってんな。

俺はそんな西岡の肩を掴んで、強制的に席へと座らせる。

俺が触れた瞬間ﾋﾞｸﾘｯと体が震えた気がするが、

「お前、何してんの」

ディスプレイを覗き込みながら俺が問うと、さっきまでの姿が嘘の様に淡々と説明が始まる。

「担当の先生方のデータ整理と、売上部数の計算、読者の傾向や、高評価だった話の傾向から今後のストーリー展開をどうするかなど、色々と考えていました」

営業部での活躍は嘘じゃないんだろう。

淡々とした説明だが、分かりやすい。

「営業成績一位は堅物なのか？」

「堅物じゃありません。失敗が出来ないのでやってるんです」

「ふーん」

だが、分析した所で編集の仕事は上手く運ばないけどな。

敢えて教えてはやらないが、そんな事を心の中で思う。

そのまま自分の席へと異動し、明日見る原稿に目を通していると、今度は西岡の方から声をかけてきた。

「高野さんは帰られないんですか？」

「なに、俺が居たら都合悪いわけ？」

「あ、いえ。すみません」

先程まで順調に進んでいた仕事も、俺が来た瞬間そわそわし手につかなくなっている西岡の姿に笑いが込み上げる。

さっきの表情を見るに、俺が嫌いという訳では無さそうだが。

「僕、ちょっと晩御飯買ってきます」

財布を持った西岡はそう言ってエレベーターへと向かう。

あからさまな、その態度に少し怒りを覚える。

ここのエレベーターは夜になると各フロアに着くまでに時間がかかる。

俺は荷物を持って、西岡のデスクへ行き開かれたままのパソコンデータを保存し、目につく荷物を適当に鞄へと放り込んだ。

そして、

「待って、俺も乗る」

閉まりかけた扉を止め、エレベーターへと乗り込む。

150cm後半だろうか。
男にしては低い身長の西岡が不思議そうに俺を見上げる。

その表情が高校の時に俺に絡んできた後輩と重なる。

そういえばコイツの経歴って･･･

「お前、家何処にあんの」

「え？」

「これ、お前の荷物。データ保存してパソコンも切ったから。とっとと帰んぞ」

「はい？」