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地下室 ページ20

まだ死を迎えてはいない朱紗丸の断片が、弱々しく喋ったのだ。

「ま……り、ま……り……」

(鞠……)

朱紗丸が武器として使っていたあの鞠。
朱紗丸から少し離れたところに転がっていた。

Aが小走りで鞠を取りに行き、朱紗丸の側に置く。
炭治郎がハンカチを口に当てながら言った。

「……鞠だよ」

「遊……ぼ……あそ……」

鞠遊びをせがむその声は、さながら子供のようだった。

人間だった頃は、きっと鞠遊びが好きな普通の少女だったのだろう。
どんな事情で鬼になったのかは知らないが、結果としてこんな事になってしまった。

光がさし、あたたかい朝日が昇り始めた。
小鳥がさえずり、日光が辺りを淡く照らしている。

鬼の絶対的な弱点である朝日。
朱紗丸がそれに耐える事はできなかった。

着物と鞠を残して、つい先程まで実に楽しそうに鞠を投げていた朱紗丸は風化していった。

Aが憐れむような目で朱紗丸の鞠を見つめる。
あの鬼は、自分が十二鬼月だと心から信じきっていた。
無惨に騙されているとも知らずに。

「炭治郎……行こうか」

「……ああ」

朝日が昇ったから、珠世達はきっと室内にいるのだろう。
こちらに来たくてもいけないだろうから、早く追いつかなくては。

「珠世さん……」

鞠に破壊されて壁に空いた穴から家の中に呼びかけると、向こうの扉の奥から返事が返ってきた。

「こちらです、地下へ」

確かに地下室ならば、日光が入ってくる恐れがない。
扉を開くと、下に続く階段が数段あった。

炭治郎を支えながら階段を降る。

地下室に顔を出すと、禰豆子がててて、とこちらに走ってきた。

「禰豆子」

炭治郎の呼びかけに、禰豆子は炭治郎を抱きしめる事で答えた。
禰豆子は続いて、Aの頭を優しく撫でると、くるりと向きを変えて珠世の方に向かった。

「禰豆子ちゃん……?」

禰豆子は、今度は珠世をぎゅっと抱きしめた。
そして空いた手で、禰豆子の行動を受けて怒りに顔を歪ませた愈史郎の頭を撫でる。

「先程から禰豆子さんがこのような状態なのですが……大丈夫でしょうか……?」

珠世が戸惑いながら尋ねる。

禰豆子の暗示→←偽物の十二鬼月



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設定タグ:鬼滅の刃 , 愛され , 原作沿い   
作品ジャンル:アニメ
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ヒメアミ(プロフ) - 月の舞さん» お待たせしました!応援ありがとうございます、これからも頑張ります!! (2021年8月19日 21時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
月の舞 - ヒメアミさん» 更新待ってました!これからも頑張ってください、応援してます! (2021年8月19日 20時) (レス) id: e23982275e (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ちょこぱふぇ♪さん» コメントありがとうございます! 褒め上手すぎませんか!?とっても嬉しいです……!!読みやすいと言っていただき安心しました!応援ありがとうございます、楽しんでいただけるよう引き続き頑張ります!! (2021年8月6日 12時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)
ちょこぱふぇ♪(プロフ) - 初コメ失礼します!とても読みやすくて内容がスッと入ってきました!こんな小説初めてです!とても応援してます!主さんのペースで頑張って下さい!!!次のお話も楽しみにしてます! (2021年8月6日 1時) (レス) id: 92821f8356 (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - 黒魔霊歌さん» 初めまして!本当ですか!?読み返していただきありがとうございます……!楽しんでいただけて良かったです! イラスト可愛いですよね!応援とても嬉しいです!更新頑張りますね! (2021年8月5日 22時) (レス) id: 773d896b8c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヒメアミ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/HIMEHP/  
作成日時:2021年1月21日 21時

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