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🌕EP.187 ページ22

初めての/懐かしい青に触れる。

海の匂いを運ぶ風が、髪を通り抜けた。

ブーツを脱いだ素足に、寄せては返す波が少しくすぐったい。


これが、本当の海。


電子虚構空間セラフで見たものと同じだが、その匂い、感触に感動する。

あちらを見ると、ジャン、サシャ、コニーがふざけて絡まって海へと倒れ込んだ。

「オイ、ハンジ。そんなもん素手で触るな」

毒でもあったらどうすると、リヴァイ兵長の声が飛ぶが、ハンジ団長は目の前の黒い物体に釘付けだ。
きっと聞いていない。

ミカサですら波に動揺している。

「ほら。僕の言った通りだっただろ?」

そう、震える声でアルミンがエレンを見て言う。

貝殻を持ち、見てとばかりに差し出す。

エレンはそれに、チラリと目をやり“ああ”と返すが、またすぐに海に視線を戻した。
そして、水平線を指差し、

「あっちにいる敵を全部殺せば、オレ達は自由になれるのか?」

そう口にした。



目の前の青い青い海を見ていると、不思議と心が引き付けられる。


・・・もっと近くで見たい。


月の聖杯の中のような色に、ふと、そこに赤い従者もいるような気がした。


「え、ちょっとA!?遠くへ行きすぎだよー!あ、」

ハンジ団長の呼ぶ声が聞こえる。
だけど、もう少しだけと一歩、足を踏み出した時だ。

ズルッと足が滑る。

急に深くなっている事に気付けなかった。
しまったと思った時にはすでに遅く、頭まで海に沈む。

慌てて上がろうとして、


─── ゴポリ


と空気の動く音。

それを懐かしいと感じ、

泳ぐ手を止め、その音に聞き入る。

ゆっくりと両目を開けると、

コポリと空気の泡が動いた。

海の青さに見入り、

思わずその色とは正反対の赤を探した。


次の瞬間、急に脇の下から腕が回り込み、グイッと引き上げられる。

水面へ出て大きく息を吸い込むと、そのまま足がつく浅瀬へと連れていかれ、

「馬鹿が!死にてぇのか!?」

頭ごなしに、そう怒鳴られた。

目線を上げると、あれだけ海に入るのを嫌がっていたリヴァイ兵長が、私と同じく全身を海水で濡らした姿で立っている。

「お前が、どれだけ弓兵のそばに行きてぇかは知らねぇが・・・俺の目の前で無駄死にだけはさせねぇ」

まさか、そこまで心配させてしまっているとは知らず、驚いたと同時に申し訳ない事をしたと思った。

それも、一時の私の状態を知っているからこそなのかもしれない。


そういうつもりじゃなかったんです


と伝えた。

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名無し - 初めまして。設定が面白そうだなと思い途中まで読ませて頂きました。ただ主人公が話している部分がちょっと分かりづらいところがあるので『』を使った方が分かりやすくなるのではと思いました。 (2021年11月9日 10時) (レス) id: 5e4676d401 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:kokubyaku | 作成日時:2020年1月31日 23時

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