🌕EP.185 溢れ出す《想い》 ページ20
「─── 悔いのない方を自分で選べ」
耳に届いた兵長のその言葉は、予想以上に穏やかで ───
次の瞬間、
───マスター
と、
優しく私を呼ぶアーチャーの声が蘇る。
あの声をもう聞く事ができないのだ。
その圧倒的な事実に、改めて愕然とする。
・・・もうこれ以上は、ムリだ。
自覚したら、止められない。
身体の奥深くが猛烈に熱くなり、
押し込めていた/感じないようにしていた、様々な感情が次々と湧き上がる。
初めて兵長から聞かされた、私が知らないアーチャーの行動と、その対話の一部始終。
それは、感情を消す事で辛うじて堰き止めていた、私の心の堤防を突き崩すと、
溜め込んでいた大量の涙の海を強制的に吐き出させた。
・・・苦しい。
胸が激しく痛み出し、息が止まりそうだ。
私の大切な人が今は隣にいない・・・。
それは、私の胸を深く抉る。
そして、その痛みの先にある激しい空虚感。
それはドンドンと広がり続け、まったく埋まる気配を見せない。
“─── 間違えてなどいない”
彼はそう言ってくれた。
その言葉を信じている。
だけど、
どうしても、繰り返し考えてしまうのだ。
もっと最善があったんじゃないか?
本当にあの時、自分は精一杯やれていたのか?
自分を責め立てる、たくさんの声。
それが、まるで嵐のようにグルグルと頭の中を駆け巡る。
そして気づく。
ああ、
そうか。
─── 私が、私を許していないんだ。
彼はすべてを受け入れて消えていった。
それなのに、私が私自身の事を許していない。
ただ、悔しくて、
情けなくて、
寂しくて、
悲しくて、
アーチャーにもう一度会いたくて、
苦しくて、
ひたすら泣いた。
・
・・・どのくらい泣いただろう?
・・・分からない・・・
ただ、泣き過ぎて若干、頭が痛い。
そんな事を考える余裕が少しだけ出てきた頃だ、
「リヴァイ兵士長!」
と、声が聞こえてきたのは。
その声に、
現実に引き戻される。
まだ重い頭が、少しだけ動き出す。
それと同時に、
着ていた外套のフードが、
フワリと
私の頭にかかった。
「何だ?」
そう答える兵長の声がすぐ真上で聞こえた。
「あ・・・し、失礼しました!・・・その・・・そろそろ昇降機の稼働時間外となりますが・・・」
きっと、リフトを管理している駐屯兵だろう。
声のした方に軽く顔を向けるが、
なぜか深緑色の外套に阻まれていて、その姿を確認できない。
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名無し - 初めまして。設定が面白そうだなと思い途中まで読ませて頂きました。ただ主人公が話している部分がちょっと分かりづらいところがあるので『』を使った方が分かりやすくなるのではと思いました。 (2021年11月9日 10時) (レス) id: 5e4676d401 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kokubyaku | 作成日時:2020年1月31日 23時