肆拾参 ページ19
夏になった。
その年の夏は暑くて、僕達はずっとイライラしてた。
夜も暑くて、蝉も鳴いてて。
桶から水を汲んで口に入れた。その時、兄さんと目があった。
けど……
うるさい蝉の声を背にして、…鬼が家に入ってきた。
「あ！」
鬼「なんだ…餓鬼二匹だけかよ…ﾁｯ…まぁいいか」
三本しかない鋭い爪を、僕に向かって振り下ろしてきた。
有一郎「無一郎!!!!!!」
ｶﾞｼｭｯｯｯ!!!!!!
有一郎「ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ!!!!!!!」
「兄さん!!!!!」
有一郎「痛い!!!痛い!!!」
僕への攻撃を食らったのは…庇ってくれた兄さんだった。
有一郎「ｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ!!!!」
鬼「うっせー!!!!騒ぐな……どうせお前らみたいな貧乏な木こりは、なんの役にも立たねぇだろ…いてもいなくても変わらないような…………
つまらねぇ命なんだからよォ!!」
目の前が…真っ赤になった。産まれてから一度も感じた事の無い、腹の底から吹きこぼれ出るような、激しい怒りだった。
その後の事は本当に思い出せない。とてつもない咆哮が、まさか……
「ヴｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞｱﾞ!!!!!!!!!!!!!!!!」
自分の口から、喉から…発せられているとは思わなかった。
・
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「……あ……」
気付くと、鬼は死にかけていた。だけど、頭が潰れても死ねないらしく、苦しんでた。
まもなく朝日が昇り、鬼は塵になって消えた。心底どうでも良かった。有一郎のところへ行きたかったのに、突然身体が鉛みたいに重くなって、目の前にある家まで、随分時間が掛かってしまった。
家にやっとの事で着いた僕は…有一郎の言葉に驚いた。
有一郎「神、様…仏、様…どうか…どうか…弟だけは…助けて下さい……」
「ｯ!!!!」
有一郎「弟は…俺と、違う…心の優しい、子です。人の、役に、立ちたいとゆうのを…俺が、邪魔した……悪いのは…俺、なんだ…罰を当てるなら、俺だけに…してください｡分かって、いたんだ……
本当は……無一郎の…無は……」
「ﾊｯ!!!!!」
今……
有一郎「無限の……」
痣が
有一郎「無なんだ」
できる。
「霞ノ呼吸、肆ノ型…移流斬り!!」
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作者名：見習い小説家 | 作成日時：2023年7月15日 11時
