18．御土産 ページ19
試合はイナズマジャパンの勝利で終わった。勝ったにも関わらず何処か暗澹した雰囲気の中更衣室に向かっていく。
時雨はたった1人の更衣室でジャージに着替えるとミーティングが行われる、と言われた男子更衣室に向かう。
コンコン、とノックをし「水無月です」と告げる。するとドアの先から誰かの声が聞こえるその声は時雨が更衣室に入る様促しているものだった。
「…入ります、失礼します…」
入室する事を伝えるその声は小さく人に伝える為に出した声、とは全く思えないものでまるで独り言の様だ。
男子更衣室を見渡すとジャージ姿の選手たちに加え今日この試合で外国を調査し一旦こちらに帰ってきたという雷門夏未やマネージャーの大谷、神門、それに監督である趙金雲、その子分である李・子分も居た。
「お土産でみんなにお団子を持ってきたのよ。貴方もどうぞ。」
大人ぽく一年年上とは思えないほどの雷門に言われ言われるがまま差し出された団子を受け取り口に入れる。団子のモチモチとした食感にふわっと口の中に広がる餡子の絶妙な甘み。結構甘いものもこの甘みは試合により疲れている選手たちを癒し広がっていく様だ。
余りの美味しさに無意識のうちに笑みを浮かべると「美味しい…‼」とぽろっと言葉をこぼす。雷門は嬉しそうに微笑むとありがとう、と口にした。
「あぁ、良かったな。…水無月。」
なんども聞いたことある声。優しく言うその声は時雨にとっては憎たらしいものだった。ぎゅっと空いた片手で握り拳を作ると怒りをそこに留める。
「うん…ありがとう、星田君。」
「…でも、水無月さん、凄いわね。女子で日本代表だなんて。頑張ってね。」
ふんわりとした茶色の髪が彼女が笑うと共に美しく揺れる。
雷門に言われたことは時雨にとってはあまり嬉しいものではなかった。だがもちろん、それを顔にも言葉にも出すわけにはいかない。ぺこっと一礼すると顔を上げありがとうございます、頑張ります！と言う。
先程まで暗かった空気も雨が上がっていく空の様に少しずつ少しずつ晴れ明るくなっていた気もした。
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