私はお前と海へ出る14(空島編前編) (ページ22)

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静かな夜の森の中をただまっすぐに走り続けた。木々の隙間を抜け、張り出した枝に手足をひっかかれながら、まっすぐに町の方角へと駆けていく。

(クソッ…！！)

　走る私の頭の中にはずっとクリケットの姿がちらついていた。あんな体にまでなって潜り続けることで、自身の先祖に挑み続ける男の姿だ。

─すまん…ほんとに…すまん……おれ達がついていながら情けねェ……！！

　血を流してボロボロになった体なのに、クリケットはそれでも私達に謝った。

(あの人達は何も悪くないのに…！！)

　昼間に酒を浴びせられ、馬鹿にするように笑っていたあいつらの顔が一瞬閉じた瞼に写る。

ル「『あんにゃろォオオ～～～～～～ッ！！！！』」

　体が感情に追いつけないで、先走っていく。ただ身を焼くような怒りを原動力に私は風が運んでくる微かな音をたどって走り続けた。

─ぎゃははは………

　その時、遠くに品のない笑い声が聞こえた。

ル「！」

『…もうすぐだ』

　そう呟いた私の声は、低く唸るようだった。

『…ここ、だな』

　昼間見た門が目の前に立っていた。酒屋にほとんどの連中が入ってしまったのか、道は昼間と打って変わってガランとしている。

(…ベラミーは…)

　周囲を見回していると、不意に私の体にぐるんと腕が巻き付いた。

『！』

　ルフィの腕が私の体に巻き付いている。もう片方の腕は町一番の高さの塔の先だ。

(なるほど…呼び出すつもりね)

ル「A」

『ン』

　ルフィの足が地面を蹴った瞬間、体がぐいと引っ張り上げられる。トン、と塔の上に着地するとルフィが周囲を見まわした。
　ベラミーの姿は見えない。すると、ルフィがスゥと大きく息を吸い込んだ。

ル「ベラミィ～～～～！！！！どこだァアア～～～～～～！！！！」

　ルフィの怒鳴り声に騒がしかった町が一瞬静まり返る。騒がしかった店という店から笑い声が消えた。静まり返る町を見下ろしていると、酒場の一つの扉が開いた。

『…』

じっとその姿を見つめる。

(間違いない、あいつだ…)

　ざわ…と風が町のヤシの木を揺らした。と、肩にルフィが手を置いた。
　「おれがやる」…有無を言わせぬ目つきに私はふっと力を抜いた。

『…きっちり、ツケを払わせてやんな』

　私の言葉に頷いたルフィに頷き返して、私は塔の上からひょいと近くの屋根の上に飛び降りた。

ル「おい！！」