632歩目 ページ21
ナ「A」
不意に名前を呼ばれる。
ナ「ルフィ1人じゃ、戻ってくるのに時間がかかるだろうから、着いてって」
ル「…？一人で大丈夫─」
ナ「それが出来ないなら、私は認めないわよ」
ナミが有無を言わせぬ口調でそう言った。
ナ「3時間よ、ルフィ！それ以上出航時間を延ばしたら、『空島』へのチャンスをあんたが逃すことになるのよ！！」
ル「！」
ナミは念を押すようにそう言った。
ナ「A、あんたは何があってもそれまでにこいつをここに連れて帰ってきて」
『…ああ』
ナ「…」
それ以上は何も言うつもりがないのか、ナミは倒れているマシラ達の手当に向かった。
ル「A」
『…分かってるよ』
私は小さく頷いて、ルフィを先導するように走り出した。
―Side ナミ―
ゾ「…なんであいつまで行かせた？」
ゾロがそう言いながら、マシラの体を起こす。
ゾ「あいつがいなくてもルフィは戻ってくる。お前もわかってんだろ」
ナ「分かってるわよ」
でも…とAの様子を思い出す。
ナ「あんなに怒ってるAをここで待たせるのは、無理」
クリケットさんに怒鳴り声を上げたAの顔や、マークを見た瞬間のAの声からは、ほとんど殺気に近い怒りを感じた。
ナ「あのままここにいさせるなんて出来ないわ。それに…あんたも私が言わなきゃ同じことするつもりだったんでしょ」
ゾ「…さあな」
そうは言うものの、ゾロの目はこちらを見ない。図星だったらしい。
ナ「でも…あんな風に言ってあげなきゃ、行けない子だから」
ゾ「…まあな」
Aは感情と義務の秤をかけると、必ず義務を選ぶ。だから、何も言わなければあの子はここでみんなと船を修理したり、傷の手当を手伝ったりすることを選んだだろう。実際、人手が足りないわけだからそうしてくれた方が私達としては助かる。
(でも、あんな顔されちゃね……)
泣きだしそうな顔で怒るあの子を見たら、ここに留まらせたりは出来なかった。
ナ「それに、Aの夢って物語を書くことでしょ？ここでけが人の手当てをするよりも、あっちに行かせた方が、あとでAが書く私達の物語に箔が付くってもんよ」
冗談交じりにそう呟いた私に、ゾロが呆れたように肩を竦めた。少し強くなった海風を感じながら、私は包帯を掴んだ。
ナ「さ！ルフィ達が戻ってくる前にやれることはやりましょ！」
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作者名：りと | 作成日時：2019年5月15日 11時
