いーち ページ2
「あ゛？」
ガチャンと取手を捻れば開くはずの扉が開かない。どういう事だと気だるげに周りを見渡すと
“屋上一時封鎖”
と書かれた紙が床に落ちていた
「はぁ、マジかよ。寝れねぇじゃん」
だりぃと呻くのはちょっとした有名人の青峰大輝だった
青峰の昼寝スポットである屋上が封鎖され、別の場所を探そうにも上の階まで来てしまって動くことすらだるく感じてしまう
(あー、ねみい…んだよ、扉壊すか？)
それは後々面倒くさそうだ
あの口五月蝿い幼馴染に何を言われるか分かったもんじゃない
「仕方ねぇな。別ンとこ探すか」
青峰に寝ないという選択肢はなく
今月号のグラビア雑誌を片手に学校を徘徊する
今の時間は絶賛授業中で要はサボりだ
「そういや…」
と何か思いついたのか、さっきよりも的確に歩いていく青峰
桐皇学園内の2階、東側の隅の教室
そこには「旧 音楽室」と書かれた古びた立て札
があり、今は使われていない音楽室だ
見つからず静かな場所昼寝には絶好の場所だ
立ち入り禁止とは書かれているが青峰にとっては知るかそんなのお構い無し。入ろうとドアを開けようとすると
「んぁ？」
中から音が聞こえた
(なんの音だよ…ピアノ、か？)
あまり音楽に詳しくない青峰だが、それよりも中に人が居るという事
こんな古びた教室に人が？まさか
青峰にとってなにかデジャブなものを感じる
こんな厳ついなりをしていても青峰はそういう部類は得意ではなかった
「…チッ、」
舌打ちをひとつ
迷っていても仕方が無い
ここは俺が見つけた場所だと。
幽霊だろうが人だろうが何だろうが追い出してやろうと決め
教室に入っていった
そして青峰の視界に入った光景がその思考を忘れさせる事になる
そこにはグランドピアノが1台
そしてそこから見え隠れする瞳を閉じた儚げな顔
流れる旋律は柔らかな調で、
窓側にあるカーテンが風にふんわりとなびいて昼間の日差しが淡く差し込んでいる
そこだけがまるで別世界のように映った
見とれてしまうその光景に思わず息を呑む
乱暴な考えが吹き飛んでしまうくらいに
優しく
柔らかく
何処までも繊細に包んでいく音色
そして音が止まると同時に
『…だ、れ？』
青峰に気づいた青年の
空間に溶け込むような声が響いた
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作者名：万能WiFi | 作成日時：2018年5月30日 1時
