君に贈る杏の花。Ⅰ【五条悟】 (ページ21)

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水無月ページ21

「マジ感謝しろよな。」

「ありがとうございます。そしてジュースもありがとうございます。」

すっかり寒さの面影はなくなり、朝に降った雨のジメジメを感じる昼。
いつものように伊地知と日葵は傑に、Aは悟に体術を教えて貰っている中、つい1時間前に帰ってきた先日のテストの成績にぺこぺことAは悟に頭を下げる。
お礼をすべきなのはAであるが、当たり前のようにジュースを2人分買うと、悟はAに手渡し、よけいAはぺこぺこ頭を下げた。

「ふぅーーーーー、」

グラウンドの淵を彩る芝生に、お尻が濡れないようにタオルを引いて座ると、悟も座ろうとしたため慌ててタオルを同じように引く。
小さくお礼を言われ、そんな小さなことにでも喜んでいると、悟は日葵を眺めながらAに問う。

「星野はなんであんな赤くしてんの。」

「傑先輩を推してるからですよ。」

「推し？」

「ファンですよ。一目ぼれしたらしいです。」

最後の部分は他には絶対聞こえないが、耳打ちをして伝える。

「は？ガチ？」

笑いながらもう一度日葵を見る悟。
Aはそんな様子に少し胸が痛む。
日葵が気になっているのか。そもそも日葵の話題を出されたことに付き合ってもないのにAは悔しい気持ちが溢れた。
勿論悟は日葵に気があるわけでなく、単に気になっただけである。

「傑はあぁ見えて屑だからな。」

「知ってますよ、硝子先輩から忠告されましたから。」

悟はそんな言葉に眉をピクリと動かす。
忠告…？Aも傑"推し"なのかと、ほんの少し嫉妬した。
Aもまた、そんなつもりはさらさらなく、2人とも屑だと忠告されたにも関わらず悟が4月からずっと好きである。

「そうかよ。」

2人は目を合わせるのをやめて向き直る。
すると、日葵達がやってきてAらに声をかけた。

「Aーーー！夏油先輩と硝子先輩が明日カラオケオールしよーって！」

「えぇ？！」

早めの切り上げ的なそういう呼びかけかと思いきや、外出のお誘いでAは驚きの声をあげる。

「もちろん五条もね。」

「二年生も呼びたいです私！いくよね？A」

「もちろん！」

ばっと立ち上がると、Aは日葵に腕を組まれる。人懐っこい日葵の癖だ。
悟がいくのかどうかは日葵がわーわーと明日が楽しみだと騒いでいるため聞こえなかったが、きっと行くだろう。
勿論皆と出かけるのが楽しみであるが、それ以上にAは悟と休日を過ごすことができることに胸を躍らせた。