検索窓
今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:4,834 hit

ページ39

ライブ当日。
前日まで仕事だったからか、いや言い訳はよくない。
正直にいおう。遅刻した。

「やってしまった…」

急いでタクシーに乗り込んで会場へ向かう。
会場近くまで来るとすでにリスナーが物販のために並んでいた。
こんな長い列作って、長い時間待ってくれているんだと感謝する。

「裏口にお願いします」

運転手さんにそうお願いして裏口に止めてもらう。

降ろしてもらった後走って裏口に向かう。
途中で女の子とぶつかってしまった。
軽くよろけたその子に

「すんません!」

とだけ声をかけて申し訳ないけれどそのまま会場に入った。

『千、羅?』

その女の子がAということには気づかずに。


「すみません、遅くなりました!」

「おっせーぞ!」

「遅刻はだっさいでセンラ」

「センラさん、はよ準備してきーや」

それぞれに声をかけられ、控室へと向かう。

パーカーの下に動ける服を着ているので荷物を置いてパーカーを脱いでステージに戻る。

「これからはヘマ、しませんよってね」

最終リハを終え、本番を迎える。

3万人ほど入る会場がいっぱいになっている。
本当に幸せなことだ。

「ここで歌えて、本当によかった。
これからも、僕たちをよろしくお願いします」

盛り上がりも最高潮になって来た頃、MCの時間にそう話す。

アンコールも終わり、舞台裏にはける。
シャワーを浴びたあと30分ほど経ったが楽屋招待までは時間がある。
外の空気が吸いたくて、うらさんに許可をもらって外に出た。

終演から30分経った会場付近は人もほとんどおらず、ライブとは関係ない一般の方が散歩をしていた。
時刻は18時半。
少し暗くなってきているウォーキングコースを歩く。

5分ほど歩いたところで自分の数メートル先に人がいることに気づく。
リスナーだと面倒だ、と思って踵を返そうとしたその時、

『千羅』

懐かしい、声が聞こえた。

振り返ると、そこには
夕闇に光。
俺とおそろいだと笑っていたゴールドの瞳がこちらを見ている。
夕闇に映えて、とてもきれいだ。

「A…?
なんでここに…」

『急にいなくなってごめんね。
引っ越しが決まってたのに、言えなかったの』

あの時いなくなったのは引っ越しのせいだというA。

『まさか、応援してたグループに千羅がいるなんて思わなかった。
センラさんって千羅だったんだね。
似ているとは思っていたけど…』

あんなに会いたいと願った彼女は、リスナーだった。

・→←夕闇に光(センラ)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
設定タグ:歌い手 , 短編集 , まふまふ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:蘭人 x他1人 | 作成日時:2020年4月1日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。