誰を守っているの？ ページ31
☆
優羽がおかしいと思ったのは、3歳のころだった。
ある日、優羽が泣いているのを目にした。
先ほどまではお絵かきをしていたのに、数分目を離した隙にその絵が涙でビチョビチョになっていた。
慌てて優羽の元へ駆け寄る。
「ひぐっ……やだ……」
「優羽？どうしたの？」
「ママ！……お外出ちゃだめ……」
私の姿を見た途端に袖をぐっと掴まれる。子供の握力だからすぐに引き離せるとはいえ、その必死さに違和感を覚えた。
「今日はママとパパと公園に行くって約束してたでしょう？ 優羽も楽しみにしてたじゃない」
「ダメ！ 今日はだめ！」
優羽が涙をぼろぼろとこぼす。
今日は、家族で公園へ行く予定があった。
パパの仕事がいつも忙しいのに、優羽のために珍しく休みを作ってくれたのだ。
我儘は子供の特権だとはいえ、突然今日の予定をなしにするのはパパに申し訳ない。
「どうしてダメだと思うの？」
「パパとママが……包丁で……」
包丁……？
なぜ公園に行きたくない理由で包丁が出てくるのだろうか。
夢と現実を混同しているにしては起きてから時間も経っている。
優羽が嘘をつくとも思えない。
何か起きるのだろうか。でも、そのことをなぜ知っているのか。
「ぜったいだめだもん……」
「……分かったわ。パパに言っておくわね」
◇
次の日、私はほとんど見ないテレビをつけた。
なにか胸騒ぎがするのだ。
そして、ちょうどニュースが流れる。
――連続通り魔が近くで捕まったと。凶器には包丁を使っていたと。
「よかった」
そんな言葉が隣から聞こえた。
もし、昨日公園に行っていたら、私たちが犠牲に……？
「ママ、良かった」
彼女がこちらを見て微笑む。
確かに、私たちの命を救ったのは優羽かもしれない。偶然でこんなことが起こるわけがない。
昨日、優羽は必死の気持ちで私たちを引き留めたのだろう。
私は優羽に恩を感じた。
──でもそれ以上に私の感情を支配していたのは……──
「優羽」
「なあに、ママ」
「次は私があなたを守ってあげるわね」
嘘だ。本当は自分の立場を守り切りたかっただけ。
だって、こんな異常な子どもなんて私は望んでいなかった。
ちゃんと正常にしないと……普通の人以上に。
そうしないと異常性は隠せるはずがないじゃないか。
勉強に目を向けさせて、優羽が異常な目を向ける輩に気付かないようにした。
中学生で恋人なんて普通じゃない。だから止めた。
女性なのに男性の家に遊びに行くなんて。だから……──
百聞も一見もしなかった→←あなたの事が(心配で/恐ろしくて)
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りたるだんど(プロフ) - 風姿 花伝さん» お久しぶりです。連載中の方も読んでいただけているようで嬉しいです。風姿さんも自分のペースで執筆頑張ってください。コメントありがとうございました！ (2018年8月4日 0時) (
レス) id: 90f15b9960 (このIDを非表示/違反報告)
風姿 花伝(プロフ) - 完結おめでとうございます。そしてお疲れ様でした。人の心の成長をよく表せていたように思います。今執筆なさっている新作の方も、今後の展開を楽しみにしております。 (2018年8月3日 23時) (レス) id: 93face14bb (このIDを非表示/違反報告)
りたるだんど(プロフ) - あさぎさん» コメントありがとうごさいます〜！綿密って言われると嬉しくて照れます！後一話残っているのでおまけ加える予定です〜！読んでいただきありがとうございます！ (2018年8月3日 20時) (レス) id: 90f15b9960 (このIDを非表示/違反報告)
あさぎ(プロフ) - 完結おめでとうございます！夢主ちゃんと楠雄くん、末永くお幸せになって欲しいです！話の展開が綿密に組まれていて、素晴らしかったです！ (2018年8月3日 19時) (レス) id: 59706cc241 (このIDを非表示/違反報告)
りたるだんど(プロフ) - もちこさん» コメントありがとうございます。そこまで褒められるとは……！すごく嬉しくてドキドキしました。読んでくださりありがとうございます。 (2018年2月4日 17時) (レス) id: 90f15b9960 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りたるだんど | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Ritarudando1/
作成日時：2017年8月9日 10時
