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84 本当の自由 ページ34

「お前たちの活躍はずっと見ていた。松風、西園……頑張っているようだな」


監督は新入生二人に労いの言葉をかけた。


「ちゅーか、頑張りまくりっすよ!」

「おかげで俺たち、大事なことを思い出せました」


浜野と三国さんが同意する。

そう、二人が入部してこなかったら、きっと私たちはフィフスに屈していた。

俯いていた雷門サッカー部を、二人は引っ張りあげてくれたのだ。


「この先にレジスタンスの本部がある」


鬼道監督が奥のドアを指さした。

レジスタンス──反乱軍。水面下で動いていたという組織。


「とすると、レジスタンスの中心人物は久遠監督……?」

「いや、私ではない」


久遠監督が言うと同時にドアが開いていく。

室内には円卓を囲んで三人の人物がいた。


「響木さん!」

「雷門理事長、火来校長も!」


円堂監督と音無先生が嬉しそうにそれぞれ名を呼び、部屋に入っていく。


「あの人が、響木正剛……」


中央に座す、黒いサングラスをかけた男性。その姿を見て私たちは自然と背筋を正した。

十年前、円堂監督率いる雷門イレブンを日本一に導いた監督だ。迫力が違う。


「みんな、どうしてもっと早く言ってくれなかったんですか?」

「すまなかったな円堂。帝国から完全にフィフスセクターの排除が済むまでは、迂闊に動けなかったんだ」


ヘタに動けば勘付かれて、少年サッカー協会の革命は不可能となってしまう──雷門前理事長がそうつけ加えた。


「その、革命って……?」

「フィフスセクターの絶対的権力者──イシドシュウジから、少年サッカー協会総帥の座……すなわち聖帝の座を奪い取る」


鬼道監督の言葉に、私の隣にいた剣城が僅かに身じろぎした。


「そうすれば、我々は以前の様な自由なサッカーを取り戻すことができると考えている」


ホーリーロード全国決勝大会では、試合ごとに勝ち点を支持者に投票することになっているらしい。つまり聖帝を選出する選挙ということだ。

そこでレジスタンスはイシドシュウジとやらを落選させ、響木さんを新しい聖帝に据えようとしている──と。


「お前たちは今度の決勝を勝ち上がり、全国大会へ行かねばならん。最早負けることは許されないのだ」


久遠監督が確固たる口調で断言する。

しかし間を入れず、神童が一歩前に出た。


「もう俺たちは、負けることなど考えていません」

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作者名:キメラ | 作成日時:2022年2月15日 9時

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