78 ジリ貧の展開 ページ28
「しんサマのシュートが止められた……」
茜が隣で悲痛な声を上げた。
それからも防戦一方の展開が続く。攻められっぱなしで、ディフェンス陣の体力もすり減っていっているようだ。
「『アルティメットサンダー』っ……！」
果敢にアルティメットサンダーに挑戦するも、あと一歩のところでどうしても威力負けして弾かれる。
帝国のスローイン。隙のない攻撃で繋がれていくパス。
相手のシュートを、三国さんはパンチングで防いだ。
高く打ち上がったボール。近くにいたのは……信助。
「信助、空だ！」
──そこで、それまで黙っていた円堂監督が叫んだ。
「相手に向かってじゃない、空に向かって飛べ！」
たった一言。しかし信助は力強く頷き、そして──帝国の選手よりも高く飛び上がった。
「『ぶっとびジャンプ』！」
──必殺技。相当練習したのか。
小さな身体をいっぱいに使って蹴り出されたボールはフィールドへ。
すぐさま神童がカバーし、そのままアルティメットサンダーの体制へ。最後のキッカーは倉間。
「『アルティメットサンダー』──！」
「させるか！ 『竜騎士テディス』！」
しかし、突如現れた化身にボールを奪還され、またも失敗に終わる。
化身使い。きっとあいつ一人だけじゃないのだろう。三人か、五人か。状況は益々苦しくなる。
それから帝国側の動きが変わった。攻撃特化型、素早い連携であっという間にディフェンス陣を抜き去っていく。
「『皇帝ペンギン7』！」
「『バーニングキャッチ』──ぐああっ！」
強烈なシュートが三国さんの技を破り、ゴールネットを揺らした。
得点のホイッスル。0-1。先制点を奪われてしまった。
「『サルガッソー』！」
「『ブリタニアクロス』！」
どうにか反撃に転じようとする雷門だったが、帝国の強力なディフェンス、技に為す術もない。
「『奏者マエストロ』！」
「『竜騎士テディス』！」
化身のぶつかり合い。勝ったのは──帝国。
「『黒き翼レイブン』！」
化身使い、二人目。
オーラを纏ったシュートは、雷門ゴールに突き刺さった。
ここで前半終了のホイッスルが鳴る。
得点差は二点。悔しいが実力は向こうが上。しかしこれ以上離されたら決着がついてしまう。
FW陣もディフェンスに徹している今の状況では突破口は見えない。
ベンチに戻ってきたメンバーの顔には、疲弊の色が滲んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 69人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：キメラ | 作成日時：2022年2月15日 9時
